第15話脱出への決戦(前編)

『ついに野望を叶えたガエターノ、しかし奴の行動はこれだけにはとどまらず、今まで集めた魔力を使って、この国を空飛ぶ超巨大要塞にしてしまう。そしてガエターノは高らかに言った。「我が国は、国自身が侵略を行う特別な国、つまり何時でも他国を攻撃して、反撃する前に降参させることができる。これこそ前代未聞にして天下無双の国だ!!」もうこうなっては復讐どころではない、何が何でもガエターノを倒さなければならない、私の心は闘志に満ちていた。」




 全治はガエターノに怒りと疑問を感じていた、アラーヌ達に「君達の、祖国を復活させてあげる。」と嘘をついて、その準備をさせて、復活したら直ぐに殺す。これまでにもそのようなことをしてきたであろうガエターノ、果たして自分の事が相手の命よりも大切なのはいいことなのだろうか?

「ガエターノ、質問があるけどいい?」

「何だ、チンカエ?」

「僕はこれまで君のおかげで望みを叶え、君のせいで命を落とした人達を見てきた。それは君自身の、望みを叶える手段だという事は知っている。でも他に方法は無かったのかなあ?」

「馬鹿馬鹿しいわい、人というのは本来自身の命と望みしか大切にしないものだ。だからこそ結束して繋がったり、裏切ったりして離れるものだろう。」

 ガエターノの言う通りかもしれない、でも裏切らずに繋がりを続ければ・・・。

「何かを犠牲にしないと、何かを得られないのは事実。でも犠牲が無くとも、何かを得られるのも事実・・。」

「チンカエ、お前みたいにただ考えていても何もならない。私は私自身の利益のために、あらゆるものを犠牲にすることを決めた。その成果をここで見せる!!」

 するとガエターノは王宮へと移動し、杖を高々と掲げて宣言した。

「我こそこの国の王、ガエターノである。さあ我が国よ、この世界を統べるために今こそ、覇道を歩みだすがいい!!」

 すると大地が激しく揺れだし、国の境界に合わせるように地割れが起きた。そして地割れした所が光り輝きだしたかと思うと、何と自ら離れるように浮き上がり、そのまま空高く登って行った。

「ねえ全治様、何だか空が近くなったような気がします。」

「うん、この国は宙に浮いているんだね。」

「ええ!!国が宙に浮くなんて、科学的には有り得ない・・・いや、たとえ魔法が当たり前なこの世界でも、有り得ません!!」

 しかし国は天まで上り、そこから飛行船のように歩き出した。

「雲が動いています、これは進んでいるという事でしょうか・・・。」

「そうだね、それよりもまずはガエターノをどうにかしないと・・・。」

「全治様、これを。」

 アルタイルが落ちていた魔導書を、全治に渡した。

「ありがとう。」

「全治様、さてはガエターノと戦うつもりなのですか?」

「うん、やっぱりガエターノは何かを間違えている気がするんだ。はっきりとは分からないけど、このままではこの世界が大変なことになる。だから僕はガエターノを倒すんだ。」

「わかりました、では倒しに行きましょう!!」

 すると王宮の方角からガエターノの声が聞こえた。

「そういえば君たちの事を忘れていたよ、もし私に忠誠を誓うのなら住人として認めるが、反抗するのならばお前達を抹殺する。さあ、どっちにする?」

「僕は、あなたに立ち向かい、あなたを倒します!!」

 すると全治と眷属達の上空に飛行機が現れた、そして飛行機から爆弾が落とされた。

「あっ、危ない!!」

 全治と眷属達は走り出した、しかし爆弾が爆発したときの爆風で、全治と眷属達は吹っ飛ばされた。

「くっ、地面に居てはまずい。ルビー、頼みます。」

「分かったわ、全治様!」

 ルビーは巨大化して全治とホワイトを乗せ、アルタイルと一緒に飛び上がった。

「全治様、どうしますか?」

「あの王宮に向かう、そして王宮ごとガエターノに雷を落とす。」

「ではそれで行きましょう!!」

 ルビーは王宮を目指して進みだした、そんなルビーを標的に飛行機は爆弾を発射させた。

「もう、あの飛行機面倒だね!!」

「全治様、まずあの飛行機から落としましょう。」

「うん、そうだね。」

 全治は飛行機の方を向いて立ち上がり、魔導書のページを開いて火を放とうとした。がしかし、火は放たれない。

「あれ・・・おかしいなあ・・・!」

「全治様、もしや魔法がだせないの?」

 全治は呆然とした、おそらくあの時魔導書の魔力をほとんど奪われてしまったのだろう。

「そんな、これじゃあケラウノス・ジュピター・セルも出せない・・・。」

「ふふふ・・・・、どうやらその魔導書はただの本に変わり果てたようだな。これでは私の敵ではない。さあ、眷属にまたがりながらどこまで逃げ切るとこができるかな?」

 すると更に飛行機が増えて、地面からは砲台が出現した。

「うわあ!さっきより増えてる!!」

「全治様、しっかり捕まっててください。」

 ルビーは旋回しながら攻撃を避けるが、飛行機からの追撃は激しく、砲台は神出鬼没であらゆるところから現れた。全治と眷属達は、ハヤブサに終われる燕のように逃げ続ける。

「このままではこちらが先に力尽きてしまう・・・。一体どうすれば・・・。」

 全治にもこの状況を打開するための方法が見つからない・・・、するとルビーが全治に言った。

「全治様、私から降りてください。」

「え!?ルビー、どうして?」

「私があの飛行機を撃墜させます、その間に全治様は身を隠して下さい。」

「ルビー、君は大丈夫なの?」

「何言っているの?全治様がくれたこの体なら大丈夫ですよ!!」

「私も行くわ、ルビー。」

「ありがとう、アルタイル!!」

 そしてルビーは高度を落として、地面すれすれの高さまで来た。

「じゃあルビー、任せた。」

「ルビー、生きて帰ってこい!!」

 全治とホワイトがそう言って飛び降りた時だった、全治とホワイトのすぐ目の前に爆弾が現れた。

「えっ!!嘘でしょ・・・?」

 そして爆弾は全治とホワイトの目の前で爆発した、そして全治の意識がここで途絶えた・・・。




 『チンカエ、チンカエ。』

 「ん・・・?ここはどこだ・・・?」

 『あっ、目が覚めたようだね。』

 全治が目を開けた時、全治は驚愕の光景を見た。そこにはハル・シャンメイ・ミアレクル・リイファール・ミガラウ・アラーヌの姿があった。

 「えっ、皆どうしてここにいるの?確か死んでしまったはず・・・。」

 「ええ、でも私たちは貴方に力を貸してほしいの?」

 「どういう事ですか?」

 「これを見て。」

 すると全治の目の前にビジョンが現れた、そこにはチンカエがいろんな場面で、複数人映っていた。

 「これは・・・どういうこと?」

 「実はあなた以外にもこの世界に吸い込まれた人たちがいるの、その人達は物語を終わらせることが出来ずに、このままこの世界をさまよい続けてしまう。」

 「つまりこの人達を助けてほしいという事だよね?」

 「ああ、もう私たちの世界で誰かが苦しむのは嫌なんだ。」

 「でも、それは一体どうすれば・・・。」

 「一つだけある、あなたと私達が融合すればいいの。」

 全治はそれを聞いて、目を見開いたまま何も言えなかった。

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