第13話魔法使いし、亡国のプリンセス

『道を進んでいくと、巨大な魔法陣に遭遇した。魔法陣は行く道を塞ぎ、旅の邪魔になっている。しかも魔法陣に近づこうとするものは、何者か達によって攻撃されてしまう。私はどうしてもそこを通ろうとすると、一人の女性が私の前に現れて、私にこう言った。「私は亡き国・エーデルマストのプリンセス、アラーヌである。我が祖国を再生させるため、そなたには何が何でも立ち退いてもらう!!」私はこれにはまたガエターノが絡んでいるのではと思い、居てもたってもいられなくなった。」




 荒野を抜けて道を歩いていく全治と眷属達、しかし全員いつここを出られるのかと考えていた。

「全治様、我々は一体いつまで旅を続ければいいのでしょうか・・・・?」

「うーん・・・・分からない・・・。」

「もしかしたら、ずっとここから出られないかも・・・。」

「ルビー!そんな怖いこと言うなよ!!」

 ホワイトがルビーに怒鳴った。

「でも、いつまで経っても帰れる様子がないもん!!」

「それでも信じて、進むしかないだろ!!」

「じゃあその結果力尽きて倒れたら、あんた悔しくないの?」

「そりゃ悔しいけど・・・。」

「ホワイト、ルビー。揉めていても仕方ないよ、その時が来たら、受け入れるだけだから・・・。」

「全治様・・・そんな弱気でいいのですか?」

「ううん、ただ覚悟しているだけだから。」

「全治様・・・。」

 眷属達は全治の覚悟に、素晴らしさを感じた。そして道を進んでいくと、沢山の人と馬車と車が止まっている所があった。

「一体どうしたんでしょうか・・・?」

「分からない、聞いてみよう。」

 全治はトラックにもたれてため息をついている男に、声を掛けた。

「あの、すみません。この先で何かあったのですか?」

「ああ、実はこの先は立ち往生していてな、今動けないんだよ。」

「立ち往生したのは何時ですか?」

「もう三日前かな・・・、私はもうこの先に行くのを諦めようとしたところだ。」

「そうですか・・・ちなみに向こうに行く別の道はないですか?」

「あるとしたら獣道ぐらいなもんだ、向こうに行けずに遭難するからやめておいた方がいい。」

「ありがとうございました、これで失礼します。」

 全治は馬車や車の間をすり抜けて、先へと進んでいった。すると目の前に赤い線が見えた。

「この赤い線は一体、何だろう?」

「おい、その先に行くな!!」

 突然、別の男が声をかけた。

「どうして、先に行っちゃだめなの?」

「この先には何かをやろうとしている集団がいるんだ、俺もその赤い線を越えて進んだら、その集団に襲われて、命からがら逃げてきたんだ。」

「そうなんですか・・・・ありがとうございました。」

 全治と眷属達は赤い線から離れた場所で、眷属達と一緒に考えた。

「全治様、この先どうしましょう・・・?」

「とにかくこの世界から出るためには、この道を進まなければならない。別の道を進んではいけない。」

「てことは、あの赤い線の先に行くという事ですか?」

「うん、僕はその先にこの世界から出られる何かがあると、信じている・・・。」

 全治は決意を秘めた眼差しで、赤い線の先を見ていた。

「全治様、このホワイトはどこまでもついていきます。」

「私も、全治様が一緒ならどこでも行ける。」

「このアルタイル、眷属の一人として参ります。」

 眷属全員が、全治に跪きながら言った。

「ありがとう、みんな。それじゃあ、ひとまず休もうか。」

 全治と眷属達は、路肩に腰を落として少し休んだ。




そして数時間後、日が落ちて立ち止まっている人たちが寝静まったところで、全治と眷属達は赤い線の所へと進み、そして赤い線を越えた。全治達が先を目指して歩いていると、向こうから兵士の集団が向かってきた。そして「止まれ止まれ!!」と、全治と眷属達に向かって怒鳴っている。

「あの人達、何か叫んでいるよ。」

全治が喋っている間に、兵士の集団が全治と眷属達を取り囲んだ。

「おい、そこの少年!今すぐ立ち去るなら解放するが、先に進むならここで死んでもらうぞ!!さあ、どうする?」

「そうか・・・あなた達は僕を殺しに来たということだね。」

「な・・・貴様、先に進むつもりか!!」

 兵士たちが一斉に槍を構える、そして全治は魔導書の光るページをめくって呪文を唱えた。

「ケラウノス・ジュピター・セル!!」

 雷の束が兵士の集団に落ちた、雷の轟音と兵士たちの悲鳴が重なりカオスな音になった。

「相変わらずの、凄い雷・・・。」

「さて、先に行こう。」

 全治と眷属達は、気絶している兵士たちを避けながら先へと進んでいった。するとまたもや兵士の集団が現れ、今度は突撃してきた。しかし全治は「ケラウノス・ジュピター・セル」で、一気に倒した。そしてさらに先に行くと、巨大な結界が見えた。結界は城壁のように高くそびえたっている。

「何だ、あれは・・・。」

「大きいですね・・・・。」

 全治と眷属達が見とれていると、また兵士の集団が現れた。

「貴様、よくここまで来たな・・・一体何者だ!!」

「僕はチンカエ、そしてここにいるのは僕の眷属達です。」

「お前たちはこの結界の存在を見た、だから生かして返すわけにはいかない。」

「ん?確かに結界は見たけど、何なのかは分からないよ。それなのに、どうして殺そうとするの?」

「黙れ!!総攻撃だ!!」

 兵士の集団が襲い掛かったが、「ケラウノス・ジュピター・セル」を唱えると強力な雷で、兵士の集団が一掃されただけでなく、結界に大穴が開いた。

「はあ・・はあ・・・、流石にこの技は凄いな。」

「全治様、技を連続で使った事によりかなり体力を消耗している。これ以上は、止めましょう。」

 アルタイルが言うと、こちらに向かってくる馬の走る音が聞こえてきた。馬がこちらに来た時、全治と眷属達は馬に一人の女性が乗馬していることに気付いた。年齢は若いが、決意を秘めた鋭い目をしている。女性が大声で全治に言った。

「お前は何者だ!!」

「僕はチンカエ、そして僕の眷属達です。」

 女性は結界に開いた穴に視線を向けると、また全治達に視線を戻して言った。

「この穴はお前が開けたのか?」

「はい、兵士達を倒そうと雷を放ったら、開いてしまいました。」

「何、雷で・・・・、お前さては腕の立つ魔導士だな?」

「ううん、僕はずっと離れた町から来た旅人だよ。」

「まあいい、それよりももしこの先に進みたければ、私と勝負しろ!!」

 全治は考えた、恐らくこのままの状態で戦ったら、敗れて捕らわれてしまう。

「ごめん、今日はもう下がるよ・・。」

「何、怖気づいたか?」

「ううん、今のままでは戦えない。だから体制を立て直してまた来るよ。」

「成程、では捕らえさせてもらう!!」

 女性は全治に襲い掛かった、全治は仕方なしに電気を放ち、女性を退けた。

「まだ、そのような力が・・・。」

「これでも僅かな力だよ。」

「・・・・分かった、でもまた来た時は、必ず捕えてやる。」

「その前に、名前を教えて。」

「私は亡き国・エーデルマストのプリンセス、アラーヌである。我が祖国を再生させるため、お前には何が何でも立ち退いてもらう!!」

 アラーヌは堂々と言うと、乗馬して去って行った。

 




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