第8話奪われた魔導書
『ミアレクルと知り合ってから、私はあの花屋に立ち寄るようになっていた。しかしある日、私は花屋の秘密を知ってしまい、ミアレクルから命を狙われてしまう。そしてまた私の前にガエターノが現れて、ミアレクルを倒した。しかし私はこの時に気が付くべきだった・・・、本当の黒幕がガエターノだということに・・・。』
ヤーブの民宿で住み込みで働くこと三日目、全治と眷属達はヤーブに頼まれて買い物をしていた。
「えっと、石鹸が売ってあるのはあの先の店・・・あ!!」
「どうしました、全治様?」
「確かあの道の先に、ミアレクルの花屋があったんだ。」
「ああ、確かに。」
「ちょっと、行ってみたいな。」
「どうしたんですか?最近、あの花屋の事が気になるようで。」
「うん、何故か行きたくなるんだ。」
全治はそう言って、眷属達と歩き出した。そして店の前まで来ると、店は閉まっていた。
「全治様、今日は休みのようですね。」
「ん?何か聞こえる・・・。」
全治は店の雨戸に耳を傾けた、チンカエの姿とはいえ神の子の能力は健在で、家の近くで耳を澄ますと、その家の中の音が聞こえてくるのだ。
【ミアレクル、今月の分は?】
『はい、こちらになります。』
【いつもありがとな、そういえば望みの種が手に入ったぞ。】
『本当ですか!!』
【ああ、もちろん相応の対価を払ってもらおう】
ミアレクルはお金を金庫から一定量持ち出して、ガエターノに渡した。そしてガエターノから、種を受け取った。
『これでまた、花屋に新しい花が咲くわ。』
【ところで恋心は無いだろうな?】
『そんなわけ無いわ、それならこの店の花全てが私の恋人よ。』
【しかし昨日、男と店先で話していたそうじゃないか。】
『見ていたのね・・・、あの人は花束を盗んだ泥棒を捕まえた人よ。昨日来たのは、わざわざ花を潰してしまったことを謝るためよ。』
【そうか、それじゃあ失礼するよ。】
そう言い残して、ガエターノは消えてしまった。全治は耳を澄ますのを止めて、ミアレクルの花屋を後にした。
「今、ミアレクルの花屋の中に居たのは、あのガエターノだ。一体ミアレクルとガエターノはどんな関係なんだろう?」
「確かに気になります、ガエターノは一体何をしようとしているのか・・?」
「うーん、この魔導書が使えれば、もっとよくわかるかもしれない。」
全治は封印された魔導書を見て思った、そして目的の店で石鹸を買うと、全治はヤーブの民宿へと戻って行った。
住み込みで働いて五日目のこと、全治は仕事がひと段落して昼休憩を取っていた。昼休憩している所はお客様もいるので、いろんな会話が聞こえる。
「そういえば、今日こんなことが・・・。」
「分かる!私もそんなことがあったの・・・。」
その一つの中に、全治の興味を惹かせるものがあった。
『おっ、花瓶の花が変わってる。きっとまた、ミアレクルの花屋のだな。』
【間違いない、こんなにも美しいのはあの花屋のだ。】
『そういえば一人で店を切り盛りしているミアレクルに、こんな噂があるんだけど・・・。』
【ああ、彼女の常に花を咲かせる能力ていう・・。】
『なんでもその能力は、契約によってもたらされたものらしい。しかも魔術師のな。』
【ええ!!契約による力って、悪魔だけの話じゃないの!?】
『そうだ、かなり一部の魔術師だけができる技らしい。悪魔の契約とは違い、代償は無いがルールを破ると、かなりのペナルティを受けることになるらしい。』
【そういえば、彼女は営業以外ほとんど見かけないなあ・・・。それも契約のルールなのかなあ?】
『詳しくは分からないけどね、ちなみに彼女の父の死の原因もルール違反によるものらしい。』
全治はこの話を聞いて、あの事が目に浮かんだ。
「もし彼女の力が契約によるものなら・・・出来るのはガエターノしかいない。」
そう思った全治は居ても立っても居られなくなって、今すぐにミアレクルに会いたくなった。
「チンカエ、ちょっといいか?」
「どうしたんですか、ヤーブさん?」
「実は俺の友人が病気でな、お見舞いに花を持っていきたいんだ。でも忙しくて手が離せないから、代わりに買ってきてくれないか?」
全治はまたとない機会だと思い、二つ返事で頷いた。
「ありがとう、これを渡しておくね。」
ヤーブは全治に、花の代金とメモ書きを渡した。そして一直線に、ミアレクルの花屋へと向かった。
ミアレクルの花屋に到着した全治だったが、店の様子が変だった。
「これは・・・・一体どうなっているの?」
店内の花が全て枯れ果て、静けさだけがあった。すると奥からミアレクルが出てきた。
「ミアレクル、一体何があったの?」
「チンカエ・・・お願い、死んで。」
「全治様、ミアレクルがヤバいことになっています!!」
アルタイルが全治に言った、全治が改めてミアレクルを見ると、うつろな目をしていて右手にはナイフが握られている。
「うわあああああ!!」
ミアレクルは幽霊のような悲鳴を上げ、全治に突進した。全治は交わして、店の外に出た。
「ねえ、死んでよ・・・、そうすればこの花屋は元に戻るの・・・。」
「それはどういうことだい?」
「黙れええええええ!!」
悲鳴を上げ斬りかかるミアレクル、避けつつも襲い掛かってくる。
「やっぱりガエターノと、何か関係があるんだね。」
全治が言うと、ミアレクルは動きを止めた。
「まさか、ガエターノの事知っているの・・・?」
「うん、あいつは僕の生まれた町に不幸をもたらした。そのせいで町は荒れ果て、僕は町を出ることになったんだ。」
「・・・・嘘よ、ガエターノはそんなことしない・・・。」
「じゃあ、ガエターノは君に何をしたの?」
「ガエターノは・・・潰れかけた私の花屋に救いの手を差し伸べてくれた。私と生きていた父と契約をして、常に植物の花を咲かせる力をくれたの。」
「その契約には、ルールがあるの?」
「うん、花以外を好きになってはいけないというのがね。」
「じゃあ父が死んだのは、父がルール違反をしたから?」
「・・・父はね、常連客のご婦人に惹かれていたの。でもそれをガエターノに見抜かれ、父の心臓は停まった。私もあなたに恋心を持っているとガエターノに疑われ、力を封じられているの。封じを解くにはあなたを殺して、あなたが持っている本をガエターノに渡さなければならない・・・。」
とここでミアレクルは、全治が魔導書を持っていないことに気づいた。
「そういえば、あなたがいつも持っている本はどこなの!?」
「そういえば、ヤーブの民宿に置いてきたな・・・。」
「早く持ってきて!!」
「持ってくるけど、渡せないよ。これは僕にとって大切な物なんだ。」
「ふざけるなああ!!」
ミアレクルが憤怒の顔で突進した時だ、ミアレクルは口から血を吐いて倒れてしまった。
「ミアレクル!!」
「フハハハハ、もうあの花屋に用はない。」
「ガエターノ・・・・あなたという人は・・・。」
全治は現れたガエターノを、睨んで拳を握った。
「あの花屋からはたんまり稼がせてもらった、そしてついでにこれも手に入れた。」
「ああーーーっ!!あれは!!」
ルビーが驚くのも無理は無い、ガエターノの手には魔導書が握られていた。
「そんな・・・・いつ手に入れたの?」
「昨日、お前がいる場所をつけておいた。そしてミアレクルと話し終えた後に、すぐに向かって手に入れた。何やら封印が施されていたようだったが、すぐに解けたぞ。」
「本当だ・・・・僕が頑張っても解けなかったのに・・・。」
「という事でこれは貰って行く。」
全治「待て!!」という間もなく、ガエターノは消えた。
「全治・・・・ごめんなさい・・・今まで・・・。」
「それ以上喋るな、今助けるから!!」
「いいの・・・やっぱり私・・あ・な・た・が・・・。」
そしてミアレクルの命は散った・・・。
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