第44話
「ケンジおじさんおきてー、おきてー!」
窓からの暖かい日差しがまぶしい中、メアに揺すられて俺は朝を迎えた。
メアの頭をゆっくり撫でてあげると目を細めて喜ばれた。
愛いやつめ。
昨日だったか一昨日だったかの焼き回しのような起床だ。
「きゃはは、おきたーおきたー!」
「……おはよう。今日も元気か?」
「んっ、げんきー! ママー、ケンジおじさんおきたー!」
メアはすぐにきゃっきゃと笑いながら大はしゃぎで部屋から出ていった。
相変わらずのようだ。
何となく心が和む。
「さてー……起きますか」
ベッドから立ち上がって身体を軽く動かす。色んなことがあった昨日の今日だが調子は悪くなかった。怒涛だった昨日を振り返ってみる。
モンスターを狩り、アルを、殺して……。
そこではっとなった。
そういえば、夜の一件で頭を潰したリミットレス・ウルフの死体や、水に押し流され飛んでいったキョウヘイは果たしてどうなったのだろうか!?
しまった昨夜はアルの亡骸をどうするという思考でいっぱいいっぱいだったのと疲労により気に掛ける余裕が無かった。
くそっ、視野狭窄すぎるぞ俺!
そもそもあれから何時間経ったんだ!?
時間の知りようは昼間の日の傾きようと夜への変化しか今まで感知できていない。
未だに時計を見た記憶が無い。
いや実際はヒデヲ宅でも酒場にもあったのかもしれないが全く覚えていないし気にした試しがなかった。
ほんとに視野狭窄だな! 好きだな視野狭窄! 盲目オヤジめ!
俺は起きて早々冷や汗だらだらになりながらも、急いで部屋を飛び出し階段をドタドタ駆け降りた。
「あら、おはようございます。どうしたんですか?」
「ちょっと急ぎの用があるのでいってきます!」
チヨへの挨拶もそこそこに玄関までやってきたところで、
「ただいまー。いやー、驚いた。事件だぞ事件だ。がっはっはっ」
帰ってきたヒデヲと鉢合わせした。
「ヒデヲ! ちょっと出かけてくる」
「どうしたそんな焦って。まあ待て待て」
ヒデヲを避けて外に出ようとしたがヒデヲに制されてしまった。
「なあヒデヲ、今は何時だ?」
「あぁ? まだ朝だが? おーいチヨ、今は何時か判るか?」
「今は9時を回ったところですよ」
居間からチヨの声が届く。
「だ、そうだぞケンジ?」
そうか、9時か。
……いや、時刻が明確になってもピンとこないぞ?
「なあヒデヲ、昨日は酒場で飲んでたよな?」
「お、おう、歓迎会兼祝勝会だな。にしても、途中でいなくなりやがってなぁ主役なのによ。あれからも盛り上がったんだからな」
「そうかわかった。すまなかったなありがとうヒデヲ」
「いやいやだからちょっと待てってケンジ!」
急いで家を出ようとするがまたも阻まれる。
「それよりも、ケンジも小耳に挟んでおいた方が話があってな。」
話があると言われて咄嗟に身構えてしまう。
くっ、村の噂話はあっという間に人づてに広がっていくらしいけど、もう騒ぎになってるのか! 手遅れだった……。
だが、切り出された内容はこちらの予想とは違ったものだった。
「アルとユミがな、おそらく、駆け落ちしたんだ」
「…………は?」
「今朝ジロウが起きたら、家に書き置きがあったらしくてな。村を出ていくってあったんだそうだ。んで、それからどこを探してもアルとユミがいなくてな。つまりは、そういうことだなってわけよ」
俺はキョトンとした。なんだそれ、俺の知ってる事実と違う?
「……あっと、ヒデヲ、話はそれで終わりか?」
「おう、引き留めて悪かったな。何を急いてるのかわからんが行ってこい」
「行ってくる」
それから端に一歩避けて逸れたヒデヲの横を抜けて、俺は外に飛び出した。
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