第25話
バキィィィィィイィィィ!
「ワオオオオオオオオオオオオオオオオン」
何かの破壊音と共に穏やかな昼下がりを引き裂くかのような雄たけびが響く。
「ワオオオオオオオオオオオオオオオオン」
「「ワオオオオオオオオオオオオオオオオン」」
とっさに振り向くと吠え猛る獣が――3頭。
保管庫の向かいにある家畜小屋の扉を内側から無理やりこじ開け突然現れた。
家畜小屋の中から出現した3頭は、どう考えても飼育されていたとは思えない威圧感を放っていた。
あれは・・・狼か?結構近いぞ!やばい!
作業台の近くから観察していると、獰猛な赤い眼と目があう。
「グルル…」と喉を鳴らし警戒した様子でこちらをうかがっている。
「ガウ!!ガウ!!」
大きな鳴き声を合図に、1頭がこちらに向かって疾駆してきた。
他の2頭も別の方角へと俊敏に移動していく。
……は、疾い!
みるみるうちにこちらに迫ってくるぞ! おいどうする!?
急な展開に何も見いだせない。
走って逃げるか? バカ言え確実に向こうの方が速いぞ?
やべえやべえやべえこのままじゃ危険なのに、オロオロすることしか出来ねえ。
どうする? どうすりゃいい!?
「うぇぇぇぇええええええええええええええええん!!」
猛然と迫ってくる獣に恐怖したのか、気づけば俺の近くにいたはずが少し離れた場所でしゃがんだメアが大声で泣き出した。
「うええええええええええええええええん! ええええええええええええええん」
その大きな泣き声に反応したのか、こちらまでおよそ3メートルほどの距離を残して、その獣は止まった。
「ガルルルルルルルゥゥゥゥ」
体躯のかなり大きい狼だ。
体高1.5メートルぐらい、体長は2メートル以上あるんじゃないだろうか。
こんなデカい動物、小さいころに動物園でしか見たことねえよ!
いやあの時は自分が幼いのを考慮すると、実際に見るのは初めての大きさだ。
全身が黒い毛で覆われていて、この空間では異彩を放っている。
双眸が赤黒く濁っていて攻撃的なオーラを感じる。やべえプレッシャーだ。
近所を散歩している犬に吠えられた時とは比べもんにならんわ。
特徴的なのは、額から一本のいかにも鋭利そうな角が生えている。
あと、鋭い犬歯が窺える。ギザギザの歯がこちらを威嚇してくる。
身をかがめていつでもとびかかってきそうだ。
……山で遭遇しちまった熊と同じ、いやそれ以上の危険じゃねえか!?
先ほど交錯した双眸は俺から視線をずらし、泣いているメアを捉えた。
ヤバイぞ! 声を張り上げて刺激してしまったからかメアが狙われている!
「うぇぇぇぇえええええええええええええん、ぐすっ」
メアの鳴き声が弱まり、えずいたところで、
「ガゥッ!」
その獣が低い体勢から一気に跳躍する。
メアへと向かって。
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