第23話

「魔法は魔力が元になって発動出来るんです。魔力は、僕たち人間やモンスターしか持っていませんが、人間やモンスターの体内に誰もが持っています。それ以外に自然発生はしないんだそうです。」

「昨日ヒデヲも言っていた気がするが、ほほー誰でも持ってるのか。」

「そうですね。人間は皆内包していますよ。ケンジさんにもあります。」

「持っている魔力の量とかわかったりするのか?」

「申し訳ないです、僕は他人の魔力量を探知できるほど熟練していない低能なんです・・・・トモキと違って上級魔法なんて使えないし・・・・トモキは鍛錬すれば他人の魔力を感じたり視る事が可能だって・・・・・・あっ」


ネガティブモードに入りかけたアルはハッとなってヒデヲの顔を窺う。


「おう、気にすんなや。だっはっはっお互い様だ。続けて構わないぞ」


ヒデヲはいつも通り豪傑のような態度を崩すことはなかった。

おそらくだが、アルにとってもトモキという人物は親しい間柄だったはずだ。心配しているんだろう。


「……続けますね。周囲の魔力を感知できるほどに熟練した方はこの村にはいないです。僕もある程度扱えますが、近くのあまりに大きな魔力を感じることが出来るぐらいです。ですから、ケンジさんの魔力量についてはわかりません。」


アルはお弁当を手に取りもやしをつまむ。


「じゃあ魔力量はわからなくても俺が魔法を使える可能性はあるんだろ!」

「はい。記憶を失う前は魔法を駆使して戦う戦士だったのかもしれませんよ?」


なるほど、アルの言う冗談は置いといて、とりあえず魔力を操って魔法を行使するというのならばまだ希望がありそうだぞ。


「魔力は体内を循環しています。まずは自分の魔力を感じるところからですね。目をつむって魔力の流れを感じ取ることができれば、幸先良い感じです」


試しに目を閉じる。言っちゃなんだが、俺は落ち着きがない部類だ。

深く息を吸って、吐く。身体の力を抜いてリラックスする。

トクン、トクンと血が流れているのは感じる。

だが、それからしばらく経ってもそれ以外の感覚を掴むことはなかった。

クソッたれが何にも感じねえぞ!? スカタンが! 

俺の逆エビ固めで締め上げてやろうか!

案の定やきもきした俺は髭をなぞりながら目を開けた。


「ああ、やはりおっさんには無理そうだわ。ありがとうなアル」

「どういたしまして。一朝一夕で成功するほど容易なものではありませんから。毎日瞑想することで、感覚が掴めるよう鍛錬するんです。僕は数週間かかりました。」


アルは苦笑いしながら応えた。


「まだ可能性があるようなら、継続してみるよ」

「はい。ところでケンジさん、早く食べないと無くなっちゃいますよ?」


俺は囲みの中央に置かれた昼食に目を向けた。

気づけば広げられたお弁当はほとんどが各自の手元で空になりかけていた。

ヒデヲは気づいたら膝の上にメアを乗せて仲良く弁当の中身をつついている。

メアもご機嫌だ。

正面にいるキョウヘイはすでに食べ終えて満足したのか、くつろいでいる。

こいつも存外ハンサムだな。なんだこの村イケメンの血が循環してんのか?


「おう話は終わったのか? そっちの弁当ももらっちまうぞ。」

「だめだヒデヲ! 俺が食う!」


しまったくいっぱぐれる!?

俺は残っていた弁当を慌てて引き寄せ、料理をかっこむ。

ああ、もやしよ、大地の味……。


「一応魔力の話はしましたけど、魔法の話は聞きますか?」

「ほぉ、あのむ、えつえいしてくれ。」

「それじゃあちょっとだけですが説明します。最初に言いましたが、魔力を操ることで魔法を発動することができます。色々属性があるんですが、僕は水系魔法の魔力が一番扱いやすいので得意です、日常生活でも役に立ってます。」


アルが笑顔で説明するが、魔力を感じられずに希望が薄いのかもと痛感した後だとなんて憎い笑顔だろうか。その顔面から田んぼに落っこちてしまえちきしょう!


「そして基本的には魔法名を唱え発動させます。こちらはある程度の法則がありますので、僕が使っていた本を貸しましょうか?」

「いや、アルよ。ケンジは今うちに泊まっているから、トモキが読んでた本を渡す」

「それならヒデヲさん。それがいいと思います。」

「ああ、どうせ俺たちには役に立たない代物さ。あの斧のようにな。」


そういってヒデヲが斧へと視線を向ける。

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