第20話 

………ヒデヲ達の帰りを待ってるメア……


「ふんふふんふ~ん♪ふふ~ん♪」

「ゲロゲーロゲロゲーロ♪」


メアが保管庫近くの机で鼻歌まじりに折り紙を折っている。

机の上には少し古めのぬいぐるみと鉛筆、大量の折り紙カエル。


「目をかいてーっとできたー!」


周りをキョロキョロと誰もいないことを確認するとぬいぐるみに話しかける。


「それじゃいくよ〜、ウッチー。お兄ちゃんのヒミツのおまじない」

「トークナーガ!」


おまじないを唱え手をパンっと叩くと机の上を折り紙カエル達とぬいぐるみがピョンピョン跳ね回った。


「ふふっせいこーう。おまじないはウッチーとメアのヒミツだよ。」

「あっ、お兄ちゃんもか。やくそくしたもんね」


体を左右に揺らしながらニコニコ顔で机の上のぬいぐるみ達を眺める。


「そうだーもうすこししたらお昼のじゅんびしなきゃだねウッチー」









あーしかしこの草刈り今日ホントに終わるのか。

振り返って自分が刈ってきた跡を見る、周りを見渡してもまだまだ藪だ。

さっきふと思った魔法を使って炎で草を燃やし尽くすってのは、まぁ考えて見ればこんなところで火を放ったらどこまでも燃え広がりそうだし、付近の建物は木造だし、そもそもこんな青々とした草燃やしたら煙がえらい事になりそうだな…

だがしかし、ここは異世界ファンタジック!


滅〇!!!開墾○ーーーーーーーーム!!!!!

とかどうにか使えないかな…


冗談はさておき魔力を扱えるアルはもしかしたら火を起こせるレベルに達していないのか、そもそも魔力扱えるだけでは火は起こせないのか。やはり魔法があるのか?

アルでダメだとしたら……


トモキだったらどうだったのだろう?


何度かヒデヲとの会話で出てきたヒデヲの息子。

この世界で目覚めてまだ2日目だが既に彼の武勇伝を何個も聞いた気がする。


村の開墾、村の外でのモンスター狩り、関所の大門と結界の手配。

そして、その行動力が災いしたのか、現在音信不通。

ヒデヲもチヨもメアもトモキが帰って来ないと心底悲しい思いをしているのだろう。

一家でトモキの生存は信じて止まないだろうが、心のどこかでは諦めているのかもしれない。この村周辺は平和というだけでモンスターなる存在が跋扈しているこの世界では絶対安全な場所なんてきっとないだろう。唐突に命を断たれる可能性なんてどこにでもいくらでもあるのだから。事実、前の平和な世界でさえ俺の最期は唐突であっけなかった筈だ。

今なら鮮明に思い出せる俺を見た時の電車運転手の表情・・・・

もし、トモキが帰らぬ人となっていたとしたらどうだったのだろうか。

あの2人が両親なのだ、さぞかしもてはやされる容姿だろう。

それが己の最期を悟った時、その顔は絶望なのか、抗うべく鬼の形相なのか、穏やかに安らかなのか、それとも苦しみに歪んだ顔なのだろうか・・・・・。


ハッ!なにを考えているんだ俺。あっけない最期悔やんでいるのか?

だが俺は生きている。第二の人生始まったばかりだ。


少なくともヒデヲやチヨには優しくしてもらっている。メアに癒されている。

環境はすこぶる良い。悲観的に捉えるのは早計すぎるぜ。


止まり掛けた手を動かす。

とりあえず今は、草を刈るのみ。


そういえば昨夜の灯りは電気を使用したライトではなくロウソクだったし、

出てきた料理も火を通されていた。あれはどうやって火を起こしたのだろう?

普通に火打ち石とか使ってるのか?

台所にはコンロなんてもちろんなかったし、窯みたいなのはあったけど・・・・。

それともやっぱり魔法か?


埒が明かないこの疑問は後で訊くとしよう。

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