第14話
「おーいケンジー! こっちにこーい!」
気付けばメアと一緒にいるヒデヲが小屋の前で叫んでいた。
俺は急いで駆け寄る。
小屋の中には一人の人物がいた。
小屋はレジャーランドのチケット販売窓口のようになっていて、そこから顔を覗かせている。
「紹介しよう。こいつが村長のジロウだ」
「おう、ジロウだ。よろしく」
紹介されたのは、おそらく俺やヒデヲと同じくらいの年で第一印象は気さくなおっさんだ。この村の中心となっているのはこの年代なのだろう。
村長で一番偉いのにジロウなのか?
「村長なのにジロウなのか?」
言葉にしてハッとなった。考えもせず頭の中の疑問を発するのは良くない!
第一声で無遠慮すぎて冷や汗が噴き出す。またやってしまった。
これでイチローは昔モンスターにでも襲われて亡くなったとか言われようもんなら目も当てられねえ! 俺のクソったれ! あんぽんたんめ!全力土下寝不可避ッ!!
「おー確かに、イチローって兄がいるぞ。もう数十年前になるが俺と大喧嘩してな”この村にはなんもねぇ”とか言って出て行っちまったさ。
そんで今は別の町で元気に暮らしている。喧嘩別れしたっきりだが別に仲が悪いわけじゃねぇぞ、行商人がたまに手紙を持って来る。」
ほっと俺は一息安堵した。ほんとに暗い話でなくて良かったぜ。
しかし本当にいるのかイチロー。完全に古き良き日本のネーミングセンスだわ。
「不躾にすまん、俺はケンジだ。よろしく」
「おう、気にすんな。よろしく」
右手で握手を交わす。俺もジロウも筋骨隆々というほどではないにしろ、がっしりとした腕だった。
軽く振ってからお互いの手を離した。
「ケンジにはこれから手伝ってもらうんだ。村長んとこの息子も、びしばしコキつかってやるぜ」
「村長って呼ぶなって言ってるだろ。お前に言われるとむず痒い、ったく……。
そうか、ケンジも手伝ってくれるのか。いやあ、ヒデヲがお前を背負って連れてきたときゃそりゃ驚いたぜ」
「それは……助けてくれてありがとうな。
だがまあなんも覚えてなくてな。しばらく世話になる」
「おう、何も覚えてないとは、そんな不憫なこともあるもんだな。ここは面白みの無いっぽけな村だが、ゆっくりしていってくれ。
あとうちの息子が迷惑かけるかもしれんが、面倒見てやってくれ。よろしくな」
ジロウは親指を突き上げる。俺も同じ手振りで応えた。
「でな、ジロウよ。ちょっとだけ外に出たくてな。折角だから門を開けてくれねえか? ケンジが倒れてたところに行けば、何か思い出すかなと思ってよ」
「なるほどそれはありえるかもな。待ってろ、今開けてやる」
そう言ってジロウは小屋の奥へと引っ込んでいった。
俺は小屋の中を覗き見る。ジロウは部屋の壁に取り付けられている舵輪のような大きなハンドルをゆっくり回しているようだ。
それに連動してギギギッと音が鳴る方へ視線を向けると大門が少しずつ開いていくのがわかった。
すぐに二人が通過できる程度に門が内向きに開き止まった。
「おーわざわざ大門を開けてくれたみたいだが、人が通るだけなら横の扉から通過する方が簡単だ。鍵で開けてノブをひねれば外に出られる。扉は閉めると勝手に鍵がかかるが大門は手動だ。外から村に入りたいときには小屋にひと声かけて扉か大門を内側から開けてもらわないと通行できない。大抵この小屋には誰かがいることになってるから、村に入れなくなるという心配は無いぞ」
「そういうこった。さ、行ってきな。
大門はしばらく開けとくからすぐ戻って来いよ」
ひと仕事終えて額をぬぐいつつジロウが戻ってきて声をかけた。
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