第13話

ヒデヲの後に続き、メアと手を繋いでもう片方の手に包みを持ちしばらく歩く。

先に見えたのは、今までの景色からは目を疑うような不自然さを感じる大きな門だった。


大型のトラックが余裕で2台は通れるくらいの横幅と高さのある大きな両開きの門だ。すぐ横には人間が通行できるような小さな扉と掘っ立て小屋が設置されている。


その門を中心におよそ人間の身長程度の木柵がずっと遠方へ続いて湾曲している。

おそらくこの柵に覆われた場所がローン村と呼ばれるのだろう。


しかし目の前にある光景の違和感が凄い。

お城の出入り口を想起させる立派な門なのに周辺は城壁ではなく木柵のためアンバランスさが際立ちこの大門の存在感は凄まじい。しかもよく見ると細かな装飾がビッシリ施されていて、製作者の意匠のこだわりの仕事っぷりが見える。ツッコミどころ満載だわ! イカレ芸術家でもいたのか? 場所を選べクレイジーアーティストめ!


「なあ、ヒデヲ……あまりにミスマッチな光景だと思うんだが、どうなってるんだこれ?」


「だっはっはっ、あれが関所だ。昔トモキが帰ってきたときにな一緒に王都から色んな人達を連れてきてな。あれよあれよとなんか作っちまった。」


ヒデヲは先ほどまでとは打って変わって大仰に笑いながら答える。


トモキって、さっき話してたヒデヲの息子じゃんか。

確かに村の為に色々してくれたとか言ってたけど、これには驚かされた。

ここまで歩いてくるのにさほど時間はかからなかったが、その間でもやっぱり田舎だななんて思っていた矢先にこれだ。

門以外の建物はどれも簡素なもので彩も無く、第一印象通りに自然と共生している。


「この関所の門からしか村の外には出られない。とは言えローン村は辺境の草原にある小さな集落だ。人の往来も週に一度行商人が来る程度で、周辺に凶暴なモンスターもいない。こんな大きな門作ってどうすんだって話だが、結局は立派なものを作ってくれちまった。だはは」


俺と手を繋いでいるメアも「すごいでしょー! きれーでしょー!」と言って目を輝かせている。


「ほれ、試しに柵から外に手を伸ばしてきな」


俺はメアと繋いでいた手を放し、やや歩いて門のすぐ傍の柵から手を伸ばしてみた。


「ッ!?」


突き出した手は何かにはじかれ阻まれた。見えない何かに遮られた様だった。

びっくりして、俺は反射的に素早く手を引っ込めてしまったが、特に痛みは無い。

昨夜、結界が村を覆ってると言ってた気がするが、なるほどこれが結界か。


「だっはっはっ、驚いたか? それもトモキが用意してくれた。

その結界があるから、村にはモンスターが入り込めないようになっている。

門も同じようになってるらしくて、開けている時だけ通行可能って寸法よ」


なるほど、内外を隔絶するバリアか。


「これは、どこの村や町にもあるのか?」


「ん? ああ、そうなんじゃないか? 珍しいものじゃないらしいぞ」


未だモンスターの危険性は未知数だが、この結界によってローン村は安泰のようだ。

なお、柵から外を一望するとそちらは村の中と違って建造物なども無い一面の草原だ。視界の奥にはそれとは別に木々が生い茂った場所が確認できる。

おそらく森だろう。


そういえば、今更ではあるが俺の視力でこんな遠くまで見渡すことができるのは新鮮だ。都会の密集した灰色世界では遠距離を眺めるなんてせずに歩きスマホ。部屋にいれば目の前のパソコン画面との格闘だったからな。

おかげで視力も悪かったのだし。こんな綺麗な景色を見たのは、5K液晶で見るゲーム内の絶景ぐらいのものだったはずだ。

ふむ、感慨深い。

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