第20話 運動会と表舞台⑤
大勢の生徒が注目するスタートラインに立った時、隣の一年生の陸上部ペアは緊張していた。それはそうだ。俺も隣が彼女じゃなかったらもっと、この舞台に呑まれていたと思う。優勝候補の三年生ペアはどちらも余裕そうにみえる。
「私ね、強欲なの」
優衣が突然、話しかけてきた。俺は前を向いたまま応える。
「そんな事ないと思うけどな。」
「そんな事あるの!だって私、今まで君とたくさん初めてを作ってきた。なのにまだまだ君と初めてを作っていきたいって思ってる!」
優衣と同じ気持ちなので俺は特に言うことがなかった。
「だから、これからも君との初めてを増やしていきたいの。運動会で君と初めての一位を私が取りたいの!ねぇ、協力してくれる?」
俺の返事は1つしかない。優衣と同じだ。
「当たり前だ。」
全員の準備が整った。
「それではよーい。」
バンッ。
三組が一斉に駆け出した。俺達を含めどのチームも遅れを取っているものはいない。
最初の問題のゾーンについた。問題は英語の単語が出題され、三問連続正解したらクリアというものだった。俺達は三問連続で正解し、一抜けしたと思ったが、三年生ペアも同じタイミングで抜けてきた。一年生でも分かるレベルの単語だったが、一年生ペアは苦戦していた。
問題二にも三年生ペアと着くのが一緒で先に問題を解いた方がリードを広げることができる展開となった。
問題二︰七つの大罪をすべて答えろ。分からなかった物、一つにつき十秒停止する。
どうやら俺達はついているらしい。俺は素早く答える。
「傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、暴食、色欲」
ここまで言って俺は優衣に最後の大罪を託した。
優衣もそれを察していたらしくその四文字を口にした。
「強欲!」
三年生ペアはまだ止まっている。全部は答えられなかったらしい。どうやら決着は着いたようだった。
三問目もスムーズに解き、最後の直線に入った。
後は走るだけだった。
「途中危なかったけど、勝てそうだな。」
「うん。君のおかげ!」
「......今まで少し疑っていたが、」
「え?」
「伝説は本当らしいな。」
「.......うん!」
ゴールテープを切った瞬間、赤組の優勝が決まり応援席がハチマキで赤く染まった。
だけど、俺はそれ以上に赤く染まってる優衣の頬を指摘すると、
「.......走ったから。」
「さいですか。」
彼女の姿を見たら今日はどんな大罪でも犯せそうな気がした。
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