第18話 運動会と表舞台③
残り二種目となって、閉会式が近づいていたのでほとんどの生徒は元のクラスの所に戻っていた。赤組は負けているらしく、この二種目を勝たないといけないらしい。頑張れと応援することしか出来ないのだが。するとそこに慌てた色瀬と優衣がクラスの場所に走って来てこう言った。
「二人三脚に出る予定だった高西君が怪我をしちゃったみたいのな。だから代役を決めないといけないんだけど、ルール上、二種目しか出れないから今一種目しか出てない人から選ぶね。」
色瀬が代表して言った。
「多分、三人くらいいると思うんだけど手を挙げてもらえる?」
俺はしぶしぶ手をあげた。他の二人も手をあげていた。どちらも、二週間前、二人三脚の男子代表になりたくてジャンケンをしていた奴らだ。
「それで決め方なんだけど今から優衣に三本の割り箸の中から一本を引いてもらってその名前が書かれている人に代役をしてもらいます!」
優衣が持っていた割り箸を色瀬が受け取りシャッフルした。
「それじゃあ時間もないし、さくっと決めるよ!優衣、一本引いて!」
優衣は、割り箸を見つめ、そして俺を見つめ割り箸を引いた。その瞬間、その割り箸には俺の名前があるのだと何となく悟った。
「じゃー優衣見せて!おー、河野君に決定!頑張ってね!」
他の男子が文句を言おうとしているのがわかった。確かに、こんな普段影の薄いヤツに優衣のペアが務まるはずもないと思っているからだ。だが、色瀬は文句が出ることを読んでタイミング良く、
「文句無いよね?」
こうなったら誰も文句なんて言えない。
「それじゃあ、少ししかないけど優衣と練習してきてよ!河野君!」
俺は立ち上がると優衣の近くまで行って一緒に練習スペースまで歩き始めた。
「ごめんね!」
優衣が悪気なさそうに謝る。
「割り箸に細工しただろ?」
「連にはバレるよねー!そうだよ!連の割り箸に少し傷を付けておいたんだ!」
「そんな気はしてた。」
「でも、私が選ぶよりは全然いいでしょ?」
「それはそうだな。」
俺は思わず笑ってしまった。
「間に問題とかがあるんだっけ?」
「そうだよ!でも、連なら余裕でしょ!」
「問題を見ないことには何とも言えん。」
その時、赤組の方から歓声が上がった。どうやら、これで勝負の行方は最後まで分からなくなった。
「熱い展開だねー。」
優衣が呑気に言う。
「他人事みたいだな。もっと緊張感もてよ。」
「だってさー」
今日、誰よりも可愛く、素敵に、そして少し不敵に微笑んでこう言った。
「君と組んで負ける気がしなくて!」
「.......そうかよ。」
「うん!」
さて、もうここまで来たらやるしかない。俺は覚悟を決めた。
「.......優衣。やるからには勝つぞ。」
「当たり前!」
二人三脚に出る生徒はスタートラインの方に集合してください。
アナウンスが聞こえた。どうやら、練習する時間は無さそうだ。ただ、今の俺たちに出来ないことは無い。そんな気がした。
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