第17話 運動会と表舞台② (優衣視点)
女子の百メートルが終わると、私はクラスの友達と一緒に男子の百メートルを見ることにした。
周りの女子は学年で人気がある男子が出てくる度に、キャーキャーはしゃいでいた。
私も一緒に騒ぐふりをしながら連がどこにいるか探していた。
私から見れば、周りがの女子が、かっこいいと騒いでいる男子よりも連の方がはるかにかっこいいし、魅力的に見える。
でも、いきなり彼の良さをアピールしても不思議な顔をされるだけなので、結局は何もしないんだけどね。
そうこうしていると、スタートラインに連の姿が見えた。私はスマホを密かに録画モードに切りかえた。彼の両親に、撮影を頼まれたのだ。
連はカメラに映ることが嫌いなのでバレないように百メートルの映像だけ撮ってくれと。バンッとピストルの音が鳴った。
連を含めた六人が一斉にスタートした。正直、連はめんどくさがり屋なので三位くらいを取るんじゃないかと考えた。しかし、予想とは違い、連は最後の最後まで競り合って一位を獲得した。
これは、私も驚いた。そして、理由が分かった。きっと連は私が取るはずだった得点を取ってくれたのでは無いだろうか。
しかも、連の上手いところは競り合う演出をしながらギリギリ一位を取るという所である。普通に走るより何倍も面倒くさいんでは無いかと思ったが、気付かないふりをした。録画を止めると、連の両親にそのまま送った。
そのまま特に何も起こることは無く、残り三種目というところまできた。
赤組は得点的には負けている。
しかし、この三種目の内の二種目を勝てば、逆転できる点数だ。私は、最後の種目の二人三脚の最終練習をするために高西を探すことにした。
すると、クラスメイトが、遠くから走って来たので丁度いいところに来てくれたと思い、高西の居場所を聞こうと思った次の瞬間、彼女達はこう言った。
「優衣ー、大変!今、聞いたんだけど高西、友達と遊んでいて怪我したみたい。だから、二人三脚の代役立てないと!」
アクシデントはいつも突然やってくるのだ。その時、白組の方から歓声が上がった。これで後がなくなった。さて、どうしようか。そう考えていると、親友の空が向こうからやってきた。
「高西君の話、聞いた?」
「うん。今、教えてもらった。」
「代役誰に頼むの?」
「一種目しか出ていない人しか出れないんだよね?」
「そうだね。このクラスには二人三脚三人に出れる人が三人いる。連君もそうだったはず。」
「でも、いきなり連に頼むのは、普段クラスで関わりも無いのに変って思われるし。連も目立ちたくないから自主的にはやってくれなそう。」
その時、空が何か閃いたのか目を大きく見開いて言った。
「私に任せて!いい方法を思いついた。」
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