第15話 運動会と少しの嫉妬
「それじゃあ、六月の初めにある運動会の種目を発表するぞ。」
沖田先生が、黒板に種目を描き始めた。
俺たちの学校ではこの時期に毎年、運動会が行われる。このクラスを含むそれぞれの学年の一組、二組、三組は赤組で、四組、五組、六組は白組だ。一応、赤組対白組という構図を取っている。
今は運動会、二週間前ということで出場する種目を決めるために時間が設けられていた。
騒がしくながらも淡々と出場競技は決まって行くのかと思ったら違った。男子が一斉に立候補した競技があった。それは男女の二人三脚だ。しかしただの二人三脚では無い。コースの途中に問題や謎解きが置かれており、他にも様々な課題をクリアしてゴールするという競技である。それに加え試練を乗り越えて一番最初にゴールしたペアは何故か将来結ばれるという伝説があり、運動会一番の盛り上がりポイントであり、一番最後の競技でもある。俺は、それなりに人気になる競技だと思ったが、ここまで立候補するとは思わなかった。
だが、黒板に書いてある女子の名前を見て理由を悟った。大山優衣の四文字は男子にとって立候補せざるを得ない理由になっていた。
男子が話し合いを始めたが長くなりそうだとなと思っていると、優衣と視線があった。他の人が見れば表情は普段と変わらないように見えるが俺には分かる。彼女は少し怒っている。多分、立候補もしてないからだと思う。周りを見渡せばクラスの九割型の男子が話し合いに参加していた。俺はアイコンタクトで、もし二人であんなのやったら目立つだろ。と伝えた。すると彼女は諦めたのか話題を切り替え、今日スーパーに寄るよ。とジェスチャーで伝えできたので俺はゆっくりと頷いた。
いつまでも話し合いは終わらないので結局はジャンケンになった。そして男子の代表は野球部の高西に決まった。高西はお調子者ものだが、とても良い奴なので俺も彼に決まって良かったと思った。そして、これを皮切りにとんとんと競技は決まって行った。
結局俺は全員参加の百メートル競走以外は出ないことになった。それは去年もそうだ。疲れるのはあまり好きではないという理由もあるが、単純に見ている方が好きなのだ。俺以外の生徒は基本的に二種目に出ている。三種目出たいと言っている生徒もいるが、一人、二種目までと決まっているらしく渋々手を下げていた。
スーパーは学校から遠い所にいつも行っている。二人でいるところを見られたくないというのもあるが、単純にここの方が安いというのもある。スーパーの帰り道に優衣に二人三脚の伝説の信ぴょう性について聞いてみた。
「なんか本当っぽいんだよね~。三個上の優勝した先輩は高校卒業してすぐに籍入れたらしいよ!え、もしかして私が、一番でゴールして高西とくっつくのを心配してるの?なら立候補して欲しかったなー!」
「.......別にそんなじゃない。.......ただ気になっただけだ。」
夕日が眩しかった。早く沈んで欲しいと思った。
「ふふ。安心して。私、君以外の苗字なんていらないから。」
彼女は優しく微笑んだ。
夕日が眩しかった。でも、今だけはこの頬の色を夕日のせいにしたいから前言撤回。まだ、沈まないで。
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