第11話 物語の裏側
金曜日の放課後。俺は急いで職員室に行き、クラスの担任である沖田先生を呼んだ。テスト一週間前なので職員室には入れなかったため先生に入口の所まで来てもらった。
「先生、少し時間がいいですか?」
「あぁ、どうかしたか?」
「一年生の頃、俺たちの学年でカンニング事件があったじゃないですか。その時の教室担当だった先生って誰なのか知ってますか?」
沖田先生は一年生の時も俺達の学年を担当していた。
「あぁ!私だよ。その時の教室を担当したのは。それがどうかした?」
「なんで、カンニングをしていると分かったんですか?」
「試験が終わった後、すぐにある生徒が教えてくれたんだ。えっーと、誰だったっけな?」
「もしかして渡辺じゃありませんでしたか?」
「あぁ!そうだ!渡辺だ!それで机を調べたらカンニングペーパーが出てきたっていうわけだ。」
「分かりました。忙しい中ありがとうございました。」
先生はおう、というと自分の机に戻って行った。
俺も、自分の思った通りの答えがもらえたので荷物を取りにいき、ある事をしてから家に帰った。
帰ると既に優衣がご飯の支度を始めていた。
「おかえりー!」
「あぁ。ただいま。」
「それで、私を一人で帰らせたんだからそれ以上の成果はあげることが出来たんでしょうね?」
「.......怒ってるのか?」
「全く。」
「ごめんって。でも、その代わり全部わかった。」
「え?ほんとに!?」
「まぁご飯を食べる時にでも話すよ。」
「分かった!」
上手く話をずらすことに成功し良かった。それから一度部屋に戻って着替え、十五分ほどニュースを見ていると、机には二人分の夜ご飯が並んでいた。
「いただきます。」
二人で声を合わせてそう言うと、さっそく優衣は先程の続きを聞いてきた。
「だから、これは簡単な話だったんだ。まず、この高校の特性上、前日には机をテスト用の席にするだろう。」
「うん。確かに!」
「渡辺は、その席が変わったタイミングで机の上にカンニングペーパーを貼っていた。な、シンプルだろう。」
「でも、それって気づかれるんじゃない?」
「普通ならな。でも渡辺はバレないようにするために、紙を薄くして、覗けば見える部分を机の上の部分と同じ色に塗り、そして、よく触らないと分からないように加工していたんだ。」
ここで、喋り疲れたので一度お茶を飲んだ。
「優衣は、テストの時の机の中を観るか?」
「そう言われれば、手で確認して何も無ければ目では確認しないかも。」
「俺もだ。ここまで来ればあとは簡単だ。試験が終わったあと、一番後ろだからカンニングしてるのがみえたみたいな事を言って机の中を先生に確認させれば、カンニングペーパーが中から出てくるっていう寸法だ。」
「なるほど!じゃあ、今週の土日どっちか学校にカンニングペーパーを私の席に貼りに来るってこと?」
「多分な。だから、俺は帰る時に、男子トイレの鍵を開けてきた。日曜日の夜に学校に忍び込んで渡辺と優衣の席を入れ替える。これでいいか?」
「剥がすだけじゃないんだ?」
「それでもいいけど反省してほしいからな。」
優衣は分かったと頷くと、話が一段落したので、やっと二人ともご飯に手をかけた。
そして、日曜日の夜十時。男子トイレの鍵は空いていて、そこから学校に侵入した。予想どおり優衣の机には薄く少し見ても、触っても違和感のないカンニングペーパーが貼られてあった。
~~~~~~~
月曜日はテストが二時間で終わったので、昼には帰ってくることができた。
「本人は気づくと思ったんだけどなぁー。」
優衣がそう呟いた。
「まぁ、机が入れ替えられているとは全く思っていなかっただろうな。」
確かにと優衣は笑う。
「さて、これでやっとテストに集中できるよ!」
「ほんとだな。」
明日は、国語のテストだ。俺はカバンからノートを取り出した。そして、早速問題を解く。
第一問の答えは因果応報だった。俺はクスリと笑ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます