第11・5話 学年1位の正体

この学校ではテストの結果が張り出されない。個人の成績がそのまま先生から手渡されている。


何故この話をしたかというと、まさに今テストの結果が返却される時間だからだ。


先に返却されていた優衣の机の周りにはいつも以上に人が集まっていた。


周りの男子も女子も優衣の順位が気になっているのだ。


「優衣ー!何位だった?」


「二位だったよ!」


優衣は特に抵抗することなく、順位を言う。


その会話を聞きながら俺は順番が来たので席を立ちテストの結果を取りに行く。


前の人と少し話すと俺の番になった。


沖田先生は少し笑ってから俺にしか聞こえない声で


「おめでとう」


と言うと、それ以外は何も言うことなく結果を手渡しただけだった。


そこには入学から変わることの無い数字が一つ書いてあった。


席に戻ると既に結果を受け取って暇な生徒がこんな話をしていた。


「この学年の一位って誰だろうな?」


「確かに!聞いたことないよね?」


「一年生の中間試験から一位が誰だか分からないらしいよ!」


「大山さんはなんか知ってる?」


その話を振られた優衣と俺は一瞬目があった。


俺が、いつも通り頼むな。とアイコンタクトで伝えると彼女も了解したような感じだった。


そして、また一瞬で学園のアイドルの顔に切り替え彼女は呟く。


「分かんない!でも、案外身近にいるのかもね!」


その発言を受けてまた騒がしくる教室。


俺は優衣が放った発言に少し動揺してしまった。


そんな俺を見て笑う優衣の姿が可愛くてそれからしばらく頭から離れなかった。

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