第10話 本当の策士

月曜日、二時間のテストを終えると渡辺がすぐに教室を飛び出した。その後、先生がすぐに戻ってきてこう言った。


「お前ら席に着け。ある生徒からこのテスト中に不正があったのではないかという話があった。なので、今から机の中を確認する。」


みんながざわざわと騒ぎ始めた。しかし、少しすると担当の先生の威圧により段々と声は小さくなり、無言の時間が教室を支配した。


「それでは、出席番号順に机の中を確認していく。」


そういうと、出席番号一番の荒谷あらやから机の中の確認が始まった。


そして、何事もなく出席番号五番の優衣まで順番がまわってきた。


先生が優衣の机を調べ始めた。五秒ほど触って、何も問題がなかったようで次の席に行こうとした。


その時、いきなり渡辺が声をあげた。


「せ、先生、よく確認しました?」


「あぁ大山の席には何も無かった。」


「.......そ、そうですか。」


その後は特に何事もなく、俺の席も問題なく通過し、残すは出席番号が一番最後の渡辺の席だけとなった。


そして、先生が渡辺の席を触り始めた。


すると、すぐ先生は異変に気づいた。


「渡辺!これはなんだ?」


「.......えっ!?」


それはカンニングペーパーだった。


「な、なんで俺の机にこれがあるんだよ!?」


渡辺は青ざめた顔で呟いた。


「おい、ごちゃごちゃうるさいぞ。ほら、生徒指導室にいくぞ。」


「せ、先生、俺やってないよ!信じてくれよ!」


「話は生徒指導室で聞く。」


その後、渡辺は文句を言い続けたが、結局先生に引っ張られる形で二人は教室を出ていった。


出ていった瞬間、教室がお祭り騒ぎになったことは言うまでもない。


そんな騒ぎの中


俺は、「策士、策に溺れるか.......。」


と誰にも聞こえない声で呟いた。



話は金曜日の放課後まで遡る。




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