第9話 シンプル

その後、金曜日までは特に何もなかった。渡辺を警戒し観察していたが、今の所何も行動を起こしてはいない。


しかし、俺は金曜日の放課後が怪しいと睨んでいた。

そう思った理由は火曜日のメールの続きにあった。渡辺にふられた後、一ヶ月以内に停学になった二人は、その後、学校に来てないらしい。


何とか進級はできたみたいだが、やはり周りの目が痛いのだろう。だから、あまり詳しい話は分からなかった。


その中で、色瀬は二つだけ、有益な情報を持っていた。


一つ目は彼女らが、その行為を完全に否定したこと。


二つ目は二人とも停学行為となった要因はカンニング疑惑だったということ。


一つ目で、故意的に行った訳ではなく渡辺に嵌められたことがわかった。


そして二つ目から、渡辺が仕掛けてくるとしたら、テスト期間中のどこかだということが分かった。


来週の月曜日からテストなので、机は今日のホームルームで移動させた。なので、もし机に細工をするなら、今日の放課後だと思っていた。


しかし、渡辺は放課後すぐに帰宅した。


どういうことだ?机には細工しないのか?ということはテスト中に直接なにか仕掛けてくるのか?


俺は考えがまとまらず、放課後優衣と二人だけになるまで、考えた。


「じゃあ、ばいばい!テスト頑張ろうね!」


「うん!頑張ろ!」


優衣の友達が教室を出ていき、二人になった。


「特に今のところ動きないね。」


優衣が教室の花の水を変えながら、話しかけてくる。

「あぁ。もしかしたらただの脅しだったのかもな。」


「でも、私彼は何か仕掛けてくる気がするの.......」


「せめて、仕掛けが分かればな。」


「でも、どう頑張っても他人にカンニングさせるなんて無理じゃない?」


「だが、彼は過去二度それをやってる。」


「もう、シンプルに嫌な人だよね.......。もう~これじゃあテストに集中できないよ~」


ん?待てよ。


「優衣、今なんて言った?」


「テストに集中できないよって」


「その前だ。」


「シンプルに嫌なやつだって」


「それだ!シンプルだったんだ。ちょっと用ができた。先に帰っててくれ。」


「え?いきなり?」


俺は廊下を飛び出した。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る