24 吸血姫と同族狩り
短めですが生存報告です。最近本当に行き詰っています。
ちょっと人間関係で作者の精神がアレになっているので、二人の距離感が変になっている気がしますが、ご了承ください。
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目の前には下位吸血鬼が三匹。年若い少女という餌を前にして、興奮を隠せないでいる獣達。抵抗などできやしないだろうと高を括り、吸血鬼であることを隠そうともせず、その長い犬歯を剥き出しにして舌なめずりをする。
それを前に、少女はじりじりと後退り、今にも己に襲い掛からんとしている吸血鬼達を睨みつける。少女の身なりはどこにでもいそうな町娘。剣を佩いている訳でもなく、魔法の杖を携えている訳でもない、唯の一般人の装い。買い物袋を片手に、市場へ行くつもりだったようだ。到底吸血鬼には抵抗できそうもない。
吸血鬼の一匹が、もう我慢できないとばかりに少女の首筋目掛けて一直線に飛び掛かる。それに合わせてもう二匹の吸血鬼も左右から逃げ場を失くすように襲い掛かった。少女は身を縮め、目をぎゅっと閉じた。
刹那。
「な、何故……」
吸血鬼の背中を、氷の杭が突き破った。それは心臓を一突きにし、すでに吸血鬼はこと切れている。残りの二匹も同様に、背中から透明な杭を生やしてその場に倒れ伏していた。
「何故って……同族ですからね」
少女――リーレは先ほどの吸血鬼と同じ様に牙を剥き出し、しかし上品に笑って見せた。そして、倒れ伏した吸血鬼の骸に牙を立てる。
「……ま、不味いです」
「当たり前だ。お前たちは人間の生き血を啜る。生きている人間の魂が宿る血潮は精々美味いだろうな。だが、それは死者の、それも忌まわしき呪いを帯びた魂に汚染された血だ。腐っているといっても過言はない」
想像を絶する不快感に口内を蹂躙され、思わず嘔吐いてしまったリーレに声を掛けたのは路地の先から現れた怪しい男、もといセイルだ。
「それ、先に言ってくれませんか……」
「そんなことを気にしていたらやっていけないぞ。ほら、さっさと飲み干して他の二体も片付けろ。見つかったら面倒だ」
己の位階を上げるために、同族である吸血鬼を殺すことになったリーレ。とはいえ、クソ不味い血を飲むのは気が引けるのだった。
「というかあなた、暇なんですか?私の拙い演技と苦しむ姿を見て愉しいんですか?それに、わざわざこんな格好する必要あります⁉」
「ああ、暇だ。現状俺は動きようがない。それと、その恰好はお前が狙われるために有効だ。弱い姿であれば相手も油断しやすい」
リーレが着ているのはフリルのついたピンクのワンピース。今までの服との違いに慣れないリーレは、少し気恥ずかしかった。しかし同時に、なぜか幾許かの懐かしさも覚えていた。ただ、何故セイルがこのような服、それも自分とサイズがほとんどぴったりなものをもっていたのかと、疑問も浮かぶのだった。
「さて、市場にいくぞ」
「え、この格好はブラフじゃなかったんですか⁉」
「当たり前だ。油と携行食がもう少ない。それに、美人がいると安く済む」
「分かりやすいお世辞は辞めてください。あなたが言ってもうすら寒さしか感じません」
「気を悪くしたなら悪かった。だが、あながち間違いという訳でもない。それなりに整っている容姿だと思うが」
「だから、そういうのを辞めてくださいと言っているんです!」
出会って間もない二人ではあったが、少し距離が縮まっていた。
血銀の十字架 ~神をも弑する刃となれ~ 疾風 颯 @Songs
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