恋は盲目なのね 4

「き、きみは誰だ? 僕をさらって、どうするつもりだ!」

 彼はとても怯えていたわ。その怯えている表情に、わたしはゾクゾクしてしまった。

 顔が好みだったのかって? 人間の造形に関して、好き嫌いを感じることはないわ。

 なんていうのかしらね……魂に惹かれるという感じかしら。彼はとても美しい色の魂をしていたわ。ずっと眺めていたいくらい。


 わたしは逃げようとする彼を結界の中に閉じ込めた。

 結界の中で一緒に生活して、一年くらい経った頃、彼はわたしに心を開いてくれたの。

 そこで初めて、彼の名前を知ったわ。

 彼の名は――。ごめんなさい、彼にかけられた呪いのせいで、名前を口にすることはできないの。

 彼はわたしにこれまで旅して見てきた世界について話してくれた。世界のことはよく知ってるつもりだったけれど、人間から見た世界というものは、わたしたちの見た世界とはまるで違っていた。

 わたしはこの目で世界を見たいと思った。彼と二人……ずっと一緒に。


 ある時、わたしの結界が破られた。

 他の守護者たちにわたしたちのことがばれてしまったのだ。

 掟で、人間と結ばれることは禁止されている。わたしと彼は追われる身となってしまった。


 わたしと彼は、世界樹の森から逃げることにした。追手を倒し、小舟を奪い、海にでたわ。

 嵐を乗り越え、海の魔物を屠り、二人で懸命に困難に立ち向かったわ。その中でわたしと彼は愛を育み、そして夫婦になることを誓ったの。

どれだけの日時が経過したかわからなかったけれど、わたしたちはやっとのことでこの大陸にたどり着くことができた。

 彼は深い傷を負い、衰弱してしまっていた。世界樹の森の守護者たちから受けた傷の治りが悪く、どうやら呪いの魔術が込められていたと分かった時には遅かった。彼は深い眠りについたまま、目を覚まさなくなってしまったの。


 わたしは彼の傷を癒しつつ、呪いを解く方法を何日もずっと探している……。

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