それから

 みことさんに言われて家に帰ってきた俺は詳しい内容は伏せつつ、香御堂こうみどうで働きたいということを両親に説明する。

 初めはあまりいい顔をしなかった両親。

 だが母親が以前と違いちゃんと俺が俺であることを認識したのか、少々渋りながらも了承、父親も働かないより働いてくれる方がいいと、俺は香御堂こうみどうで働く許可を両親から取り付ける。

 ただし、俺が本当の事を伏せているのがわかるのか、完全に俺のことを信じきっているわけではなさそうで、必ず休みの日には顔を出すことを約束させられた。

 みことさんは相変わらずで部屋も何もかも散らかし放題だ。

 最近変わったことと言えば宿香御堂やどこうみどうへの出入りが解禁され仕事が増えた。

 さらに、みことさんがあの訳の分からないダンボール箱の正体を教えてくれて、さらにその片付けをしていいと言ってくれた。

 あのダンボール箱の中には更に美しい漆の小箱がいくつもあって、小箱の中身は忘れられた神様やアヤカシモノたちが存在している。

 美しい小箱は彼らを封じ込める器なのだそうだ。

 みことさん曰く玉手箱。

 どれも忘れ去られたことで初めは荒れ狂っているらしく、数年寝かせておとなしくなったところで処遇を決めるらしい。

 トモカヅキはそう言った物の気配を敏感に感じ取る。

 だから箱を開けなくても触れただけで中身の正体や今の状況が良く分かった。

 そして俺はその状態をみことさんに報告して、それぞれの箱をどう処分するか決め片付けをする。

 今ではダンボール箱も少なくなって廊下も通りやすくなった。

 廉然漣れんぜんれんさんは辻堂つじどうさんを弟子にしたとかで上機嫌で現れたが、みことさんに何やら一喝されたのか、辻堂つじどうさんは暫く道祖土さいどさんがあずかることになったらしい。

 ずっと百目鬼どめきさんから借りたままだったアスラさんも、みことさんの一言で素直に百目鬼どめきさんに返された。

 香御堂こうみどうの周りに張り巡らされた方陣の解除に走り回っている百目鬼どめきさんは、文句を言いながらも廉然漣れんぜんれんさんを介して様々な眷属に協力を求め頑張っている。

 トモカヅキの経験と聞いたところによる百目鬼どめきさんは、ものすごい傍若無人な印象だったが、俺が見た百目鬼どめきさんはそんなことはなく不思議に思った。

 どうやら様々な眷属に出会うことでその身勝手さに振り回され、反面教師的に考え方も変わってきたらしい。

 俺も宿香御堂やどこうみどうで働くようになって、振り回され続けているから気持ちはよくわかる。

 あの人たちが優先するのはいつでも自分の気分。本当に身勝手なのだ。

 そんな身勝手な連中の上司でもある、さらなる身勝手な方々は、最近は神前域に入り浸っている。

 神前域に放り込まれた那岐なきさんがいるからだ。

 廉然漣れんぜんれんさん曰く、存分に壊れていた那岐なきさんはみことさんの言う通り、暇を持て余していた神仏様たちに取り囲まれ、壊れた魂とことわりを少しずつ修復されている。

 修復は今までの物を全て消去し、真っ白な状態にして新たに神仏様たちが自分勝手なことわりを描いていくのだと言う。

 どのような人が出来上がるのかは勝手な神仏様たち次第となってしまうらしいが、今は那岐なきさんも神仏様たちと楽しそうに過ごしているようだ。


 香御堂こうみどうでの毎日はとにかく今までの「人間知哉にんげんともや」の日常と「トモカヅキ」の日常がおかしかったのではないかと思ってしまうほどに非日常で非常識な日々。

 だがそれもここでは日常。

 香の勉強も、そういう世界の勉強も、俺にはとても刺激的で楽しい事柄だ。

 これから俺がどうなっていくのかはわからない、でも、俺の世界は様々な色に染められて変わり始めた。

 

 1足す1は1で、2引く1は1じゃ。

 のうなったのなら補われ、補われたならのうなる。常にあるのは1だけじゃ。

 欲には善悪が無い。

 もし其処に善悪が生まれて居るなら、それは己の善悪だけ。

 これから先、お前が何かをしようとも、されようとも、欲のせいにも、人のせいにもしてはならんで。

 お前がここに居る事、それ自身がもう欲だでなぁ。


 あぁ、ばっちゃ。

 世界は今日も自分勝手な身勝手だ。

 そしてめまぐるしく俺の色々が描き換わる。

 俺がここにいること、それは本当に強欲だ。

 でも、俺は欲があってよかったとすら思っている。

 そうでなければ、今俺はここにはいないのだから。

 そうさ、俺はこれから先もその欲のなかで、自分勝手な連中と生きていく。


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香御堂。 御手洗孝 @kohmitarashi

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