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「今の現世うつつよは特定の皆に知られている神仏は出番が多いが、それ以外のただ名前を憶えられているだけの神仏は呼ばれることも少なく暇なんだ。基本、神仏は引きこもりでな、呼ばれない限りは顔を出さないし、出したくない。呼ばれた神仏は呼ばれたから仕方なく出ていくが、好奇心は旺盛だから呼ばれたついでに、というより呼ばれた内容を叶えもせずに、自分の暇つぶしを行う。しかし、暇つぶしすらできない『呼ばれない』神仏達は暇を持て余し、しょっちゅう香御堂こうみどうにやってくる。私が暇な時は良いが、そうじゃない時にやってこられると迷惑以外の何物でもない。そこで、適度に壊れた人間を香御堂こうみどうと神域の間の場所、神前域に置いておく。すると暇な連中は壊れたものを修復すると言う暇つぶしを始めるわけだ」

「人のことわりがあるから神域に入ることはできないけど、ここまで壊れてしまっている場合はその前段階の神前域には入れるの。なかなかここまで壊れている人間っていうのも珍しいから神前域に入ってこられるのも少数だけどね。神仏様はね本当に好奇心だけは旺盛でね、そう言うのが入ってくると構わずにはおれないのよ」

「それで、この人はどうなるんですか?」

「人として再生することになるわね。もちろん神仏様の都合で、以前の記憶も以前の自分も無くした状態にはなるだろうし、神前域にどのくらいの時間いるかって事にもよるけど長く居過ぎると現世うつつよに戻って生活するのは無理で、神前域と香御堂こうみどうがある霊山だけの行動範囲になるわ」

「それって、もう人じゃなくなるって事なんじゃ」

「どういう理屈でそう取るかだな。ことわりという面で見れば人ということわりを持っているから人ということになる。現世うつつよで生活するのが人と取るなら人じゃなくなる。どんな物事も結局他者がどう見るかで変わる」

 トモカヅキはふと素朴な疑問が頭に浮かび、みことに聞いてみた。

みことさんは神域を行き来しているんですよね? どうしてこの場所にというか香御堂こうみどうがある霊山から出ることが出来るんですか?」

「それは私が神仏に選ばれた存在であるのに関係している。私は風脈や地脈、それに流れている龍脈を通じて力を得られるんだ。呼ばれた神仏も同じだな。行こうと思えばどこにでも行って何をもすることもできる。言ってみれば、香御堂こうみどうの龍穴というのはただの玄関だ。神仏はお堂や社というものを玄関にしている場合もあるが、香御堂こうみどうはそれと同じ役割をしている」

「玄関、そういうとなんだかこう凄いものに思えませんね」

 トモカヅキが言えば、みことは大きく笑った。

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