「あの方陣は百目鬼どめきの持っている様々な力の集結なのよ。私の持っている力とは別の力の作用も使っているし、何より使う事は考えているけど解除することは考えてないっていう計画性の全くない実用性重視のもの。すぐには無理だわ」

「なんだやる気があるのか。残念だな、生き人間のお友達が出来上がるかと思ったのに」

「本当に最低ね、神仏っていうのは。人の嫌がることをあえてやっているみたいで」

「当然だろう、己が居て他が居るんだ。自分が良ければ楽しければそれでいい、それでも私は人間の血があるし人間と付き合って存在しているからまだましな方だぞ。本物はそれはそれは愚かで身勝手だからな。まぁ、上手く解除出来たら香御堂こうみどうに招待してやろう。貴様のように何があっても己を保ち変わることをしない者は結構連中に好かれるんだ、香御堂こうみどうに来ることが出来れば良い事があるかもしれん」

「そりゃどうも、好かれたいなんて思わないけどね」

 神仏の本質を知った今になってそんなことを言われてもちっとも喜ばしくないと、少々機嫌悪く腕を組んで瑞葉みずはが言えば、みことは大笑して扉を開け放し出て行った。

 廊下に出てロビーまで歩いていくと、階段の一番下の方の段に腰を下ろしてぼんやりとしているトモカヅキがいて、みことが声をかければ心配そうな瞳で見つめてくる。

 その瞳にみことはそれでもアヤカシかと呆れた溜息をついた。

「もう少しアヤカシらしくしたらどうだ、迷子の子供じゃあるまいに。玉はちゃんと渡してもらったからな、香御堂こうみどうに帰るぞ」

 みことの言葉に二階を見上げれば、腕を組んで眉間に皺をよせ、ロビーのみことを睨み付けている瑞葉みずはが居て、放っておいていいのかとトモカヅキはみことに聞くが、みことは振り返ることもなく「さぁな」と言葉を濁してさっさと歩いて行ってしまう。

 トモカヅキは睨み付けつつも溜息をもらしている瑞葉みずはに一言声をかけた方がいいのか迷ったが、早足で去っていくみことについていかねばと慌てて後を追った。

 外に出ると玄関前に呆けた顔をした能力者たちが綺麗に一列に並べられ、無数にいた木偶でく達は何処を見ても居らず、それと同様に数えきれないくらい集まっていた眷属たちも姿を消している。

 ただ一人、廉然漣れんぜんれんだけが溶けた鉄の門扉の外側で立っていて、二人を見つけて手を振った。

「あら、その子は?」

「戦利品だ。中々いいだろう?」

「見事な壊れっぷりね。神前域に連れて行くつもりなの」

「このおもちゃを与えておけば、暫くはあちらの連中もこっちに干渉しなくなるだろ」

 二人の会話を聞いていたトモカヅキが、何のことかと聞けばみことはふふんと鼻を鳴らして笑った。

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