沈黙した瑞葉みずはに瞳を半分閉じ、悪戯な笑顔を見せてみことは聞く。

「それで、貴様はどうしたい?」

 瑞葉みずはは自分がどうしたいなどという事柄よりも、みことが人ではなく神そのものであったのだと言う事実の方が衝撃的だった。

 みことの言動や力が人間離れしていると思っていたのはあながち間違いではなかったのだ。

「恩情を与えてやってもいいが、私のおすすめは存在消去だ。私は悪は悪のままが良いと思っている。よくあるだろう? 非情な悪だったはずなのに、何故か最後に良い人になったり、実は人情的な理由があったりという物語。あれは虫酸が走る。悪は悪で在り続けるべきだ。悪で在り続けることが出来ないのであれば、はじめからやらなければ良い」

 どうするのだと選択肢を与えながらも、口を完全に塞ぎ答えることが出来ないようにして、みことは続ける。

 その言葉を聞きながらも、混乱の中にある瑞葉みずは

 そんな瑞葉みずはの頭の中には一つの疑問が思い浮かんでいた。

 それは神仏が現れ、人ではないみことが居る香御堂こうみどうとはいったい何なのかということ。

 瑞葉みずはは、霊的に素晴らしいと代々言われ続けた香御堂こうみどうを手に入れたいと思っていた。

 手に入れた暁には憑代よりしろの人間を使って神を降ろし自らの為の万事を為そうと。

 だが、今の話を聞く限りでは香御堂こうみどうという存在は只の霊的な存在というだけではない様に思える。

 唸るように言葉を話す瑞葉みずはに気づき、みことが口元の弦を緩めた。

「どうした? 決まったのか?」

「その前に、香御堂こうみどうって。あの山って一体何なんなの?」

 瑞葉みずはの疑問にみことは冷めた目付きになって淡々と言葉を吐き出した。

「簡単に言えば現世うつつよの神仏の居場所。神仏の本来の居から現世うつつよに来るための玄関口で神仏が好き勝手出来る場所だな。言っておくが貴様の考えているような無限の力が湧きだし、自らの欲望全てが叶えられるような場所ではない。龍穴の力は私以外は扱うこともできない、他の者が手を出せば暴走し全てを無に帰する、とにかく危険な存在だ。だが、龍穴の力は神仏が現世うつつよに居るためには必要な力で勿論私にも必要な力だ。人間で例えるならば空気のような存在で、なくてはならない物。だから私が生まれた時、香御堂こうみどうに龍穴が現れたんだ」

 みことの説明に瑞葉みずはは瞳を見開いたのち、ゆっくりとその瞼を閉じて唇の端を少し持ち上げ歯を見せ自分自身に嘲笑した。

 瑞葉みずはの体に巻き付いた弦は、詰まらない事は言いからさっさと結論を出せと言っているように、ゆっくりと苦痛を与え締め上げてきている。

 しかし、今の瑞葉みずはにはそんな体の痛みよりも自らの愚かさの方が痛く感じていた。

「最低だわ。だったらさっさと教えてくれたらよかったのよ。あたしたちのやっている事は無駄ですよって」

「無駄かどうかは貴様らが決める事だ。百目鬼どめきが施した妙な方陣はちゃんと機能するし乗っ取られれば私には手出しは出来ない。香御堂こうみどうからの力を全て遮断されてしまっては私は器としても機能しない。どのように使うかは貴様ら次第。当然、私が管理できなくなった龍穴は暴走するが、暴走したとしても私の関するところではなくなる。なにより聞けば教えてやったが貴様らは聞きに来なかっただろう?」

 瑞葉みずはの自身に対する嘲笑は次第に大きく高笑いとなってひとしきり辺りに響き、みことがあっけにとられていると大きく深呼吸をして息を吐いた瑞葉みずはが言う。

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