「アンタ、神憑かみがかりなんでしょ、そんなこと言っていいの?」

「それこそが貴様が神ではない証拠だな。自らが培った中での善悪で物事を考え、良いのか悪いのかと思案する。神が最高であり崇高であると考える、故に神を罵るような言葉は悪い事であると認識したのだろう? 神は決して考えない、己は己であり他は他、己の感情に常に素直で正直だ。他者が何を言おうとも関せぬのが神、神憑かみがかりの私だからということも関係なく、普通の人間が何を言おうとそれに対して善悪を言うことはしない。神にことわりさがは無い。貴様の其れは人としてことわりさがを持っているからこその感情だ。とはいえ、先ほども言った通り貴様は少々『神が作った人間』としてのことわりを失い、歪み淀んだことわりの中にいるようだ。考え方は神に近しく全ての事柄は己だけの為に働き、他者がどうなろうと関係ないという醜い存在」

「私が醜いですって? 神憑かみがかり様ともあろう方が常識に囚われすぎなんじゃない? 戸籍上の弟という物をこんな姿にしたから、人道に外れているから醜いと?」

「いいや、違うな。人道的というそう言う概念は神仏には関係の無い所だ」

「嘘が下手ね、じゃぁ何故あれを見てそんなに怒りの感情を出しているの?」

「あぁ、なるほど。それは勘違いだな。私がこのように激しくなっているのは怒りが原動力ではない。問題はそう言う事例によって、貴様が人間のことわりを持たず、神に近しい存在になってしまっているという所だ。己に近しく、己と似たような存在になろうとするものを神仏は許さない。当然だろう? 自分が作り出した存在が、自分の思惑とは違う物を持ち合わせてしまえば、作った本人にしてみれば面白くないものだ。神仏の感情というのは善悪の判断のつかぬ人間の子供と似ている。貴様は神仏にとって存在を許されない人となってしまったのだよ。同じく、裁定者である私としても今のお前の存在は私には許しがたい。非常に気分が悪く殺しても構わないと思うほどだ」

「裁定者……」

「私は貴様が作る木偶でくとよく似ているのだよ。神が作った神の木偶でくだ。神の意志が存在する人間であり、神そのものとも言える。この世界に顕現することのない神に代わって、神の領域を犯そうとするもの、神が与えたものを歪ませたものに対し、人としての器をもつ神そのものの私が裁定するのだ。当然だが、人道的だの何だのという人のことわりの中で裁定するのではない。どうだ、神仏こそが傲慢で愚かだろう?」

 そう言葉を交わしている内にみこと瑞葉みずはの所まであと数歩と迫っていた。

 瑞葉みずはは急いで隣の部屋に行こうとドアノブを握ったが、木製のドアから無数の弦が伸び、ドアノブごと瑞葉みずはの手に絡みついてドアを開こうとしても開かない。

 微笑みながら真後ろに立ったみこと瑞葉みずはの肩ごしから顔を出し、その耳元に優しい声色で囁きかける。

「さぁ、玉を貰おう。このままの知哉ともやの体に、知哉ともやの魂が無い状態で知哉ともやに死なれても困る。生きるにしろ死ぬにしろちゃんと人のことわりの中でやってもらわねばな。貴様はどうする? 私は、貴様はこの世界から存在そのものを抹消されるべきだと思うが、あのような目に遭いながらも健気に未だ貴様を『姉』と呼ぶ弟に免じて、今回は特別に貴様自身に決めさせてやろう。生か死か、貴様はどちらを選びたい?」

 まるで瑞葉みずはの反応を楽しむようにみことが声をかければ、その声に従うように手から腕、体全体に弦が絡みついて瑞葉みずはは完全に身動きが取れなくなった。

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