「まぁ、そう醜い顔をするな。木偶でくは姿を消すが部下とやらは力を無くすだけで死にはしない。木偶でくは幾らでも作れるんだ、部下が死なないのだからマイナスの値にはならないだろう。どうだ、安心したか? 安心したところで話を戻させてもらうが貴様には当然の事ながら無用の品である知哉ともやの玉を渡してもらおう」

「力が無ければあんな連中の命なんてどうなろうが知ったことじゃないし、力が無いなら命があっても使えない連中を抱えるだけで氷点下だわ。それに、さっきから玉、玉って煩いわよ、廉然漣れんぜんれんに聞かなかったの? 渡すつもりなんてこれっぽっちもないわ」

「さっきも説明したがあれは神仏の玉ではない。貴様には確実に必要ないものだ」

「要、不要は関係ないわ。アンタが欲しがるならあげないってだけの話よ。それに使い道はいろいろあるでしょ」

 にやりと何かを企むように言い放った瑞葉みずはだったが、みことは気に留めることはない。

「では勝手にいただくとしよう。あれは貴様の物ではなく、知哉ともやの物であるからな」

 馬鹿にするように一息勢いよく吐き出して、何処にあるかも知らないくせにと息巻く瑞葉みずはのもとへとみことは歩み始める。

「貴様が先ほども言った通り魂と体は嫌でも引き合う。確実にこの場所にあるのは知哉ともやの体が証明している。そしてこれだけの家具や物を吹き飛ばしても、そうやって強気な態度を取れるということはそれらの場所には置いていなかったと言うこと。つまり貴様が持っているか今いる周囲に在るのだろう? 別に私は貴様に選択権を与えていない。渡せと言って渡してくれればそれでよし、渡さなくとも持ち帰る。貴様のような輩に選択肢を与えてやるほど私はお人好しじゃない」

 ゆっくりと歩みを進め、表情は先ほどとそれほど変わりはしないのに、トモカヅキが首から下げているゴシェナイトが高い音を立ててひび割れはじめる。

 慌ててトモカヅキがみことにそれを伝えれば、みことはトモカヅキにこの部屋から出て待つようにと言った。

 言われるまま、あたりに散らかった物を蹴飛ばし急いで部屋から出たトモカヅキは慌てて扉を閉め、廊下にへたり込んで大きく息を吐く。

 ゴシェナイトのひび割れの音は小さくなり収まったが、未だ扉の向こうから発せられる濃い神気にトモカヅキは四つん這いになりながら扉から離れた。

百目鬼どめきさんはよく普通の状態で居られるな」

 一息ついて呟いたトモカヅキが、ここまでくれば大丈夫と止まったのは部屋からずいぶん離れた一階のロビーだった。

 トモカヅキが出て行き、扉が閉まったのを確認したみことは再び視線を瑞葉みずはに向けて、瑞葉みずはが寄りかかっている女神像を眺める。

「アテーナー神か。貴様には似合わぬ神の像が置いてあるな」

「似合わないですって? これ以上ないあたしに相応の神様でしょ。美しくあり、知恵と戦いの神だもの」

「アテーナー神は平和と自治の為に戦う神だ。貴様のような自らの欲のために戦う者と同じとされてはアテーナーが怒り狂う。なんなら降ろして本人に聞いてみるか? 貴様が相応であるかどうかを」

 みことが堪え笑いをしながら足を踏み出せば、瑞葉みずははにやりと微笑んで女神像の後ろにあるスイッチを押した。

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