だがこれくらいの脅しで負けてなるものかと瑞葉みずはも負けずに睨み返した。

「神仏がこの世界に存在していられるのは誰のおかげだと思っているの? あたし達が信じて名前を覚えて使ってあげているからでしょ」

「だから貴女達に無条件で何でもしてあげろと? 人間て本当に身勝手で醜いわね」

「ふん、アンタ達程じゃないわよ」

 瑞葉みずははコーヒーを口に運んで一息つき、じっとりといやらしく笑って見つめてくる廉然漣れんぜんれんの瞳を見返してさらに言う。

「交渉は無理よ」

「あらどうして? 私達が貴女達人間につき従わないからかしら?」

「そんなことどうでもいいわ、アンタが直接自分で来てまで欲しがるものをあたしが手放すわけないってことよ。そうね、香御堂こうみどうと交換て言うなら考えても良いけどね」

「あらそう、意外に面倒ね。それじゃ忠告を言わせてもらおうかしら。今後一切香御堂こうみどうとその霊山に手を出さないこと、そして憑代よりしろ体質の人間を悪用しないこと。第一、百目鬼どめきは貴女のお父さんの代であの場所から手を引いたはずじゃない、それを今更になってどうして躍起になってほしがるのよ。何か理由でもあるのかしら?」

 呆れたような溜息をつきながら廉然漣れんぜんれんが言えば、瑞葉みずはは溜息が漏れ出した唇を睨み付けて言う。

「理由は一つ、あたしが欲しいのよ、あの無限の力と神々を従える力があれば何でも出来るじゃない。第一お父様は気が弱すぎるのよ、ほんの少し脅された位で先祖代々苦労してきて、もうすぐ手に入るってところでさっさと手を引いちゃうんだもの。あの土地は百目鬼どめきが持つにふさわしいわ。憑代よりしろだって貴重な存在、そういう貴重なものは全て百目鬼どめきの物なのよ」

「強欲ね、それにいい感じに馬鹿で調子に乗っているわ。小さな欲は良いけれど大きな欲は自らの何かと引き換えにしても良いと言う覚悟が必要よ。手に入れたいと欲を張る、それが自らの努力で為したものでないなら余計にね」

百目鬼どめき瑞葉みずはに不可能はないわ。天才って言葉を知っている? 天が才能を与えているのよ、努力なんて必要ないわ」

「天才、ね。中々の思考回路でゾクゾクしちゃう。せっかく忠告してあげたのにきく気は無いみたいね」

「だって、あくまで忠告であって命令じゃないから聞く必要はないでしょう? それにたとえ命令って言われてもあたしに命令できる奴なんてこの世界にはいないわ」

 高笑いしていう瑞葉みずは廉然漣れんぜんれんは唇の端を大きく引き上げ、口が裂けているかのように笑って言い放った。

「珍しく私も同じ気持ちだわ。でもね、最後にもう一度忠告しておくわ。さかきみことは私のように優しくないわよ」

 嫌な笑いを残し指を鳴らして膜を破った廉然漣れんぜんれんは立ち上がる。

 テーブルに代金を置くと店の者に挨拶をし、これみよがしに瑞葉みずはに向かって手を振って別れた。

 勝ち誇ったかのような態度が瑞葉みずはに何とも言えぬ不安を与え、心の中には震える様な何かが湧き上がってくる。

 しかし、廉然漣れんぜんれんが自らでやってくるほどに欲しがっている玉は自分が持っているのだからと言い聞かせ、家に帰ると木偶などを使い家の結界を強化し万が一に備えた。

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