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「
「そんな奴等は今まで幾人も見てきただろう。貴様はその者が欲しているものを手にして現れ人を惑わす。大抵はその欲に我慢できずに誘われてしまうが、そうではない人間も勿論いる。どうして
「わからない。しかし、それから
「トモカヅキが
「海にない楽しさは確かに陸にあったが、陸には楽しさを感じないこともあった。日々を過ごすうちに自分は何を求めていたのかわからなくなった。自分がどうしたいのかどうすればいいのかわからないまま日々は過ぎ、
「当然の結果だな。己の世界の中にない物がよりよく見えるのはどんな場合でも同じだ。だが存在理由は違う、己が何故そこに存在しているのか、自分が存在しているその意義を自ら見出さねば、ただただ己の世界以外の全てが素晴らしく感じ欲する気持ちだけが膨らんでいく。貴様は自らの存在から逃げ、さらに奪い取った
額に走った痛みによって金縛りが解かれるように、中身がトモカヅキの
身体が痺れた様に思い通りに動かず、呆然としているトモカヅキを部屋に残し
先ほどまでの青磁の香炉を少し横によけ、新たに持ってきた青銅製の香炉に香炉灰を入れて香炭に火を入れる。
炭の火によって温められた灰の上に乗せて熱することで、あたりにはバニラのような甘い香りが漂ってきた。体の中にその香りが入っていくほどに体の痺れる様な緊張は解けていき、トモカヅキはゆっくりと瞳を
「どうだ、少しは楽になったか」
「はい、随分に。ありがとうございます」
「安息香が効いたようでよかった。大丈夫だとは思うが苦しくなったら言え、部屋から香を出す」
自分を気遣うように言われ、トモカヅキは少々戸惑いながら
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