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「お出ましってわけね、意外に早かったわ。
「お願いねって簡単に言ってくれますが、自分はあくまで見るモノですから攻撃や防御は得意じゃないんですよ」
「大丈夫よ、大物はこっちで引き受けるし後は
半分ほどおこった香炭を香炉灰の中に赤く燃える部分だけ顔を出すように埋め、部屋の隅にある階段箪笥の引き出しから袋を取り出しその火の上に袋の中身をつまんでぱらぱらと振りかけた。
煙を上げて香辛料のようなどこか酸味と辛味を感じさせる香りが辺りに漂い始め、
眩い光が
頭の頂点付近からは耳が、蹲っていた身体を伸ばしていくようにゆっくりと生え、それと同時に顔の中心が前方へ突出しつつ口が裂け白銀の狐の顔が現れる。
「この姿も久し振りね」
「姑息ね。空間を捻じ曲げて自らの存在を示し誘導しながらその実、分からないだろう地中から忍び寄って奪還作戦を実行ってとこかしら。止めた方が得策だわ。せっかくの香木も無になるもの」
地中から
様子を察したのか高い笛の音が鳴り響き、まだ光に到達していなかった影たちはそれを合図に引き下がっていった。
辺りに影の気配を感じなくなり
抜け出して周りの景色を眺めれば、全ての色が失われた灰色の世界となっていて、風にしなっていた樹木がぴたりとその動きを止めていた。
「なるほど、空間の時間を止め、範囲内の無関係な人間達は全て排除済み。一応の常識は持ち合わせた相手のようね」
「それは褒めているととってよろしいのか。
空中に浮かんでいる
「まぁ、一応褒めていることになるかもしれないわね。
アスラはこめかみから鋭く黒く輝く角を生やし、半分伏せる様に閉じられた瞼の向こうには金色の瞳が輝いている。
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