20年

名刺入れだけは膨らむ

しかし財布と心は貧しいままで

あの頃はそんなことも気にしなかった

真夜中に煙を吸い込むと

日々の嫌なことを綺麗に忘れられる気がした

昔は考えてることなんてなくて

明日のことすらわかりたくないのは

今も昔もきっと同じはずだった


走る走る重たい体で汚れた肺で息をしながら

何も考えずにひたすら走っている

くだらないことすらも考えずに

きっと明日も同じ日が続いていく

僕は安らぎを求めた

私は快楽を求めた

それでもきっと心のどこかで片隅で

諦めていたんだ


外気温は摂氏3°C

華氏37.4°Fとも言うらしい

あの頃はそんなことも知らなかった

真夜中の空気を吸い込むと

小さい体で校庭を走る幼い自分が蘇った

今では考えることが多過ぎて

明日のことすらわからないのは

今も昔も同じはずだった


走れ走れ小さな体で白い息吐きながら

何も知らずにひたすらに走ってくれ

くだらないことばかり考えて

きっと明日も同じ日が続いていく

僕はそう思っていた

私はそう願っていた

それでもきっと心のどこか片隅の方で

悟っていたんだ


何か忘れてきたものがある

何か残してきたものがある

きっとそれは大切で暖かい何か

しかしもう思い出すことは叶わないのだろう

だから僕は今この瞬間を

だから私はこれからの時を

絶対に忘れない忘れたくない

だって死ぬ時に天国へ持って行けるものは

記憶すなわち思い出だけだから

そんなことを考えた2月13日

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