おまけ ティアのはなし

「……大変だったようだな」


翌日、アルパライト複製のためにアルテリアの研究室を訪れた途端労いの言葉をかけられた。


「……じ、事情を知っていたので?」


わたしとて母だ。あれが特殊な性癖を持っているのかぐらい見破っておるわ。わたしはともかく、あれはピエットの子故、何か抱えているとは思っていたが……まさか一部始終を嬉々として話してくるとはな」


「あれ報告したの!?馬鹿なの!?」


「お母様に知られていた方がより興奮するとかなんとか言ってな……なあ、わたしはもしや育て方を間違えたのか?」


「いやー、親父に反発して家出した俺にはなんとも」


ネクターはアルパライトの板を複製しながら答える。気分が乗らないのか、はたまた精製難易度のせいか、普段なら5枚は作れるところをせいぜい3枚複製したところで息を切らしてしまう。


「無理はせんでいいと言ったろう。それに、今日は確か……」


「お母様ーーーー!!!」


突然ティアが現れ、アルテリアを撫で回し始める。アルテリアは慣れたようで全てを諦めなすがままとなっている。


「ハァ……ハァ……やはり御母様が宇宙最高に可愛いですね……!全く動じない所も完璧でございます……!」


「ほらな。このようにわたしはいつもこやつの玩具に成り下がっておる。貴様、一度見たであろう?」


「ああ、だから可愛い物に目が無いって知ってるんだよ……」


もう21年も前の事であろうか。かつてこのようにアルテリアを撫で回す光景を偶然目撃してしまった事がある。写真記憶が出来る自分を恨んだ瞬間でもある。


「と、日課は終わりに致しましょう。さ、ネクターさん。行きましょうか」


「あ、ああ……い、いいのだろうか……」


ネクターは助けを求めるかのようにティアの拘束から解放されたアルテリアをチラ見したが、アルテリアは頭を下げていた。


「すまない……わたしは謝る事しか出来ない……本当にすまない……教育も満足に出来ない神の子と蔑んでも構わない……どうかわたしを許してくれ……」


「ああっ、これですこれ!私、さらに昂って参りました!」


「……もうやだこの人」


この後、懺悔室に連れ込まれ行為に及んでいたのだが、その中で起こったおぞましい光景を描写する勇気は持ち合わせていないので勘弁していただきたい。


ただ一つ言えることとして、懺悔室から出て来たティアの表情はとても晴れ晴れとしていたということと、ネクターが生気を全て失った顔で地上での鬼ごっこを終えたプリスの胸に倒れかかった事ぐらいだ。

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