警戒

「はじめよう」

 あなた達は詠唱を開始しました。

「燃え盛る火炎のように」

 ボイの格闘は見た目に反して軽やかで攻撃が効かないことから避けること中心の行動で戦闘を続けています。


「引いてください」

「おう!」

 ボイが下がったのを確認してから、

「放て、オーバーファイアー!!!」

「ぷるん」

 叫び声とともにスライムのからだから音が鳴りました。それだけでなくスライムは今までに見せなかった行動をしました。

 火球の激突を受け流そうというのかドーナツ状に形状変化しました。

 放たれた魔法の玉はきれいに穴を通過しスライムの後ろに広がる草むらで着火しました。

「そんな」

「ぷるるん」

 スライムは自慢気に体をしきりに揺らしています。

「諦めるな! もう一発だ!」

 ボイの言葉で固まっていた脳が動き出し始めからまた詠唱を開始しました。

 2発目、舌は準備を終えて先程よりもスラスラと言葉は流れ出ました。

「放て、オーバーファイアー!!!」

「ぷるん」

 スライムはまたしても穴を開けました。

「うわあああああ!」

 ボイが走り出しました。

「危ないですよ」

「俺がここで切り抜ければいい!」

 ボイは全力で走りながらスライムの輪の部分を切り裂き走り抜けました。

 スライムは元の丸まった形に戻り火球を浴びました。

 大きな蒸発するような音をあげるとその場にスライムの姿はもうありませんでした。


「ウォーター」

 鎮火を終えた頃にはボイは戻ってきていました。

「早かったですね」

「こんな時のために鍛えてるってもんだ」

「本当であって?」

「もちろんだ!」

 4人でひとしきり笑ってからスライムの亡骸、といってもそこに居ただけであってもう既に何も残っていない場所を見ました。そこにはなにもないはずが物がありました。

 それは第一王女の指輪でした。

「よっしゃー」


 王様への報告は淡々としたものでした。

 終始何故王冠が最初ではないのかという事を聞かれて終わった4時間でした。目的を全て達していないことは事実ながらその追求ばかりで労をねぎらうという事は無く長い時間が過ぎ去りました。

「ああは言ってますけど父は喜んでいると思います。王冠も探してきてくださいますか?」

「もちろんですよ!」

 という第一王女とのやり取りを済ませて、今は再び森で捜し物をしている。

「いてぅって何すんだよ!」

「別に何でもないのであって」

「ちょっと喧嘩は良くないですよ」

「そうだぞ」


END 指輪
































最初へ。

「気まぐれな王家の頼みのお使い」へ

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894917063/episodes/1177354054895315636

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