否定

「そんな事ないですよ」

 あなたは老人の言葉を否定しました。

「ほう、何故そう言える」

 老人はあなたに聞きました。

「そうだぜ、嘘をつくことは時に本当の事を言うより傷つけるんだぜ。って当たり前か?」

 ボイは言いました。

 それでもあなたは、

「いえ、あなたは歳をとってないですよ」

 と言いました。

 ギロリと音がしそうな程老人とボイに睨まれたものの怯むこと無くあなたは老人へ歩み寄りました。

 老人は近づくとうつむきつつ身を引くようにしました。

 フードを上げるとそこにはシワひとつない美少女がいました。

「な」

 ボイは声を漏らしました。

「や、辞めろ、見るな」

 美少女はフードを目深にかぶって顔を隠しました。

「雰囲気だけで人を判断しちゃ駄目だな」

 ボイは言いました。

 ボイはそのまましゃがんで美少女の顔を覗き込もうとしますがさらに下を向いてしまいました。

「隠すことないだろ」

「私は見られたくないんだ。だから、老人を装って居たのだ。目的のものはこれだろう? さっさと出てってくれ」

 美少女は言うと何かを投げました。

 危うく落としそうに鳴りながらもそれを受け取りました。

「なんだ?」

 手を広げてみると中には指輪ありました。

 しかし、意匠はゴジュ第一王女の指輪とは異なっていました。

「これじゃないぞ」

「嘘だ。そんな事言えるはずないだろう」

「いやいや、これじゃないって。なぁ」

 あなたは肯きました。

「そんな、その指輪じゃ駄目なのか?」

「駄目だよ」

「それはうちの物で一番高価なのにか?」

「は?」

「は? って馬鹿にしてるのか!」

 美少女は今までとは正反対に顔を隠そうともせずにボイに向かって走り出しました。

「なら何が目的だ!」

「ちょ、落ち着けって」

「落ち着いていられるか!」

 ボイは美少女から目線をそらしてあなたを見ました。

「実は……」

 あなたは自分達のおかれた状況を話しました。


「なんだ。それなら最初からそうと言ってくれればよかったのに」

「いや、助けられてなんだがそんなタイミングは無かっただろ」

「それは済まない。しかし、探しものなら簡単だ」

「本当か!」

「ああ」

 美少女は混ぜていた鍋の前に戻ると何かをつぶやいてから中身を皿によそいました。

「さあ、これを飲めば目的のものの場所は分かる」

「おし!」

 ボイは勢いよく謎の液体を飲み干しました。

 旗から見てはドロっとしている事しか分かりませんでした。

「お、おお!」

「どうだ。これが私の力だよ」

 美少女は言いました。

「すげぇ、くっきり見える。マナとドゥーニャ起こして行くぞ!」

 勢いそのままマナとドゥーニャを起こし美少女には簡単に感謝の気持を伝えて家を出ました。


 捜し物はほんの数分で王冠、指輪共に見つかりました。

 今までの苦労が不思議な程でした。

 捜し物はその日の内に王に届けました。

 ワグ王は、

「褒美は後日」

 と言っていました。

 

「しっかし、ここのはずだったけど、なぁ」

 ボイに聞かれあなたは深く肯きました。

「本当であって?」

 ドゥーニャが聞きました。

「そうだよ。というか覚えてないのか?」

「無茶ですよ。あの時私達寝起きだったんですよ?」

 マナは言いました。

 今あなた達は森の中に居ました。

 捜し物を見つけることができたのは美少女のおかげだと言うことで感謝とワグ王からの褒美のいくらかを渡すために家を探していました。

 しかし、どれだけ探そうと王冠や指輪よりも大きく動くこともないであろう家がいつまで経っても見つかりませんでした。


「ふふふ」


END 老人少女
































最初へ。

「気まぐれな王家の頼みのお使い」へ

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894917063/episodes/1177354054895315636

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