準備万端
「よし、行こうか」
村の入口であなたは仲間達に声をかけました。
「おう」
と力強い声が返ってきました。
ザプスカイの街とスリブシの村の間にある森は人通りも少なくない場所で道も整備されています。
しかし盗賊が出ることも珍しくなく一般人の移動には護衛を雇うことも珍しくありませんでした。
ただ整備された道は昼飯前に探し尽くし無い事を確認していたため今は道をそれて木々の中で探していました。
森の中は慣れた道よりも危険は多く盗賊がどこから出てくるのか分からないため警戒を怠るわけには生きません。
「気をつけろよ」
ボイが振り返り言いました。
「分かってるのであってよ」
ドゥーニャは平気そうに答えました。
「そ、そうですよ。私達だって弱くないんです」
マナの言葉にあなたは深く頷きました。
「そうだな」
ボイはそう言って再び歩き始めました。
王冠にしても指輪にしても木に引っかかっているか地面に落ちているのかさえ分からないため上も下も見ながら歩き続けるものの一向に見つかりそうもありません。
「これ本当に失くしたのか?」
ボイが言いました。
「失くしていてももう取られちゃったかもしれませんよね」
マナが言いました。
「そんな事報告できて?」
ドゥーニャの言葉に仲間達は首を横にブルブルと振りました。
「だよな~無くても見つかるまで探さないとだよな~」
「しっ」
マナが人差し指を立てて口の前に当てる仕草をしました。
「……何だよ……」
小さな声でボイが聞きました。
「……音がします……」
「……それは当たり前であってよ……」
ドゥーニャが小さな声で言いました。
「……違います。自然音じゃなくて、何かが接近するような……」
マナの言葉で仲間達は静かになり互いに背を向けあって耳に意識を集中しました。
「……」
「…………」
「………………ボムん」
「……!」
確かな音が聞こえたことで仲間達はビクッと体をはねさせて音の下方向へと身構え戦闘態勢を取りました。あなたとボイが前に出てドゥーニャとマナは後ろへ下がりました。
「ボムんボムんボムん」
音はどんどんと大きくなります。
それと同時に心臓の鼓動もまた早まります。
「ドクドクドクドッドッドッ」
「サー」
風により揺れる木々、草の中から姿を現したのは一匹のスライムでした。
「なんだ。スライムかよ」
ボイはスライムをみた瞬間に肩の力を抜きダランと両腕を下げました。
「油断するのでなくってよ」
ドゥーニャが注意するように言いました。
「分かってる。誰が相手でも油断すればやられるからな」
ボイはドゥーニャの言葉で武器を構え直しました。
スライムは姿を現してから動きを止めたまま動こうとしません。
「襲ってきませんね」
仲間達は一瞬だけ気を抜きました。その感覚が空気のピリピリとした状態が解けたことで感じられました。
しかし、マナの言葉を待っていたように、スライムはググッと縮こまるとあなためがけて上へと跳ね上がりました。
「ボムん!」
「あぶない!」
あなたはボイの突進によりスライムの攻撃を食らうこと無く助かりました。
「油断するなと」
「話している暇はなくってよ」
ボイの言葉を遮るようにドゥーニャは言いました。
あなたは自分の居た場所を見るとスライムは既に二撃目の準備を始めていました。
「クソッ」
「ボムん」
ボイの言葉と同時にスライムはあなたとボイめがけて飛び上がりました。
「フンッ!」
今度は地面を転がることでスライムの攻撃を回避しました。
「ドスン!」
スライムが地面に着地すると先程よりも強く地面が揺れました。
「こいつはダラダラやってられないな」
ボイは言いました。
そこでスライムが三撃目の準備を始めました。
続き。
「準備万端2」へ
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894917063/episodes/1177354054896079437
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