誰も彼もとはいかず
「いや、あなたのことは信用できない」
あなたはマナを信じて男に背を向けて店の奥へと入っていきました。
「後で後悔しても知らないからな!」
男は叫びました。
あなた達は振り向くことなくそのまま豪華な廊下を進みました。
「やっぱり腹が減ってちゃ何もできないよな!」
席に着くなりボイは言いました。
「ぐううう~」
とボイはお腹を鳴らしていました。
周りではギラギラとした見た目の人が多くいました。
そんな事を気にする様子もなく仲間達は弛緩した様子でした。
「おまたせしました」
出てくるものでてくるもの見た目から華やかで匂いも、入れた瞬間の食感も、口の中にジュワ~と広がる味もどれもが意識をもっていかれるほどの魅力を有していました。
仲間達も至福の時間を楽しんでいる様子でした。
あっという間に食べ終えてしまい目の前には何もなくなりました。
「あんまゆっくりしてても仕方ないし行こうぜ」
ボイはそう言って立ち上がりました。
会計のために店員さんにマナが話しかけました。
「えっ……」
「どうした!」
マナの言葉にボイが聞き返しました。
「あの、これ」
マナが見せたのは桁違いの会計でした。
「おいおい。どうすんだ? 足りるのか?」
ボイは言いました。
「こんなに無くってよ」
ドゥーニャはさも当たり前といった様子で言い切りました。
「それは困りましたねぇ」
店員さんはニヤニヤ笑いを浮かべながら言いました。
「払えないなら仕方ありません」
「クソッ! 後悔するってこういうことかよ!」
ボイが叫びました。
逃げることは叶わずその場から離れることはできませんでした。
数年後。
あなた達は未だ働き続けていました。
払うことのできなかった代金を借金として、店の店員として働いていました。
「いらっしゃいませ」
今ではボイの言葉遣いも長い店員生活の間に矯正されて丁寧なものへと変わっていました。
そんな生活を続けながらも王の命令が消えた訳ではなくほとんどの生活を労働に費やしながらも捜し物は続けていました。未だ見つかる気配はありません。
一度休暇に街へ戻り王に事情を説明したことがありましたが、
「贅沢のために国費は使えん」
と借金の肩代わりは断られてしまいました。
「前菜であってよ」
しかしドゥーニャの口調には特に変化はみられませんでした。
一番変わったのはマナでしょう。
「いらっしゃいませ!」
店長のはからいでメイド服を着せられたマナは最初は恥ずかしがっていたものの今では働き出す前よりも明るく振る舞うようになりました。
彼女は今日も元気に笑顔で接客しています。
「パリーン」
「何やってるんだ!」
「すみません」
END 借金
最初へ。
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https://kakuyomu.jp/works/1177354054894917063/episodes/1177354054895315636
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