第155話 拐かし

隊長殿は若い騎士をなだめ、更に土下座しやがった。

まさに火に油とはこういうことだ。

「お怒りは分かります。ですが我らの国には聖女様のお力が…」

頭に素足を乗せてやった。

「それ、何の意味があるの?」

今度こそ若いのは剣を抜いて斬りかかって来る。

「殺してやる!」

隊長跳ね起きて、羽交い締め。

「止めろ!」

「と、止めないで下さい!この女、隊長のっ!隊長にっ…!」

そんな二人を眺め、息を吐いて横たわり、毛布を被った。目が覚めたら家に戻ってればいいのに。

背後の騒ぎが収まって、部屋には隊長殿だけが残った。

「何にお怒りなのか、教えていただけますか?」

再び起き上がって向き合う。

「他力本願。自分の頭で考えろ」

たぶん、本、当、に分かってない。

「我らには…」

「国の付き合いはあるんでしょ?」

「はい」

「戦争したいの?」

「いえ、そんなことは!」

聖女様は、国が所有する「財産」だろ。盗めば当然、紛争の火種になる。そんなことすら、考えない。

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