第42話 美味しいものは幸せ

隣に座るエーリーズは微妙な顔をしている。

心配しなくても美味しいから。食べたいと言ったのはアナタでしょ。

意を決したのか、両手でバーガーをつかむと、かぶり付いた。

向かいに座っていた殿下と、貴族の子弟二人も倣うようにかぶり付く。

破願一笑。

「美味しいですっ」

「良かったわねー」

お行儀悪いから躊躇してたんだろうね。今度はサンドイッチ作ってもらおうか。

「おばちゃん!」

「はーい」

食堂に職人兄弟が姿をみせた。

近くまで来て、テルトが弟の腕をつかむ。

「何、兄貴」

「お食事中、失礼いたします」

兄が挨拶して、ナントは同じテーブルに王太子殿下が座っているのに気付く。あ!って顔してテルトの後ろへまわったけど、遅いよ。

「いいとこ来たね」

本当にちょうどいい。

「殿下もいらっしゃるし、教科書の話、印刷の話しなきゃね」

厨房の方へ手を振って、二人の分のバーガーを頼む。

「ほうじ茶ラテ、ですか?これもとっても美味しいですね」

本来ならあるはずであろう洋風の甘味が、全滅っていうか絶滅っていうか。だから、女の子ならこういうの好きだと思ったんだ。

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