第37話 加藤と僕②
「あきとー! 今日隼人と遊び行くんだけど、あきとも来るよね?」
放課後の教室。
まだまだ元気な太陽が窓から強い光を放つ。
「あ……、ごめん、今日塾なんだ」
僕は重いランドセルをよいしょ、と背負い、葉菜に謝る。
「あきとの塾、今日からか! 塾ならしょーがないね。じゃ、隼人と二人で遊ぶか」
二人で遊ぶんだ。
僕がいけないから、遊ぶのまた明日になるかな、なんて思ったんだけど、でも、そんなの二人には関係ないもんね。
結構、残念だけど、僕は中学受験をするからみんなより頑張んなくちゃいけないんだ。
これくらいのこと、我慢しなきゃだよね。
そう思って、顔を上げると、隼人の顔が少し、赤くなっているのが目に入った。
あれ?
なんだか心がちくっとする。
葉菜は、僕のことなんてもう視界にないかのように隼人と楽しそうに話している。
僕、帰らなくちゃ。
お母さんが車で迎えに来てくれている。
「じゃあね」
僕はそう言って、背を向けた。
そんなことが何回も続いた。
塾は次第に忙しくなっていき、葉菜からも隼人からも、遊びに誘われることは、なくなっていった。
二人はいつも仲良く話していて、僕たちは三人組だったのに、いつの間にか、二人と一人になっていた。
二人とは、距離が離れていった。
席替えをして、授業中のグループ学習中、隣の席になった子が、「あの二人、仲いいよね」って言った。
うん、と僕はうなずいた。少し前まではそこに僕もいたのになって思った。
そのあとの言葉に僕は驚いた。
「あんな仲良しなカップル、憧れるな」
「葉菜ちゃんがいっつも自慢してくるよー、隼人君が優しいって。こないだの誕生日にはほしかったコスメくれたんだって」
知らなかった。
二人は付き合っていた。
二人とも、教えてくれなかった。
でも、確かに、二人は仲良しだった。
葉菜の笑顔はとっても幸せそうだった。
僕は葉菜が幸せならそれでいいと思ってた。
だけど、幸せは続かない。
あの日、事件は起きた。
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