第78話
「それで、男子寮までなんの用だ?」
「引越し粗方終わったから、スライムを引き取りに来たんだけど……この大きさだと、人に見つからないのは難しそうだね」
「ただでさえ俺達は衆目を集めているだろうからな」
「うん。だからここに来るのに不自然にならないようにするために付き合ってますって言っちゃった。ごめんね」
「あー、まぁ、そういうことなら仕方ないな……。いや待て。結婚を前提に、なんて言葉必要だったか?」
「勿論。こうでも言わないとヘイン今頃怖い人達に囲まれているわよ」
「大体想像はつく」
大貴族の令嬢と黒ネクタイの庶民が婚約もせずに不純異性交友してるなんて話が広まったら今頃俺はリゼの家お抱えのボディーガード達に囲まれていただろう。
「でも、俺の身の事より婚約まがいの方がまずくないか?」
「それは別に。寧ろ、婚約したってキッパリ言ってしまった方が後々楽になるのよ」
「どういう事だ?」
「そのうち分かるわよ」
「リゼがそういうなら、まぁ」
二人で話していると、放置していたスライムが咳払いしてきた。
「こほん。あー、私でお困りですか?」
「っと、そうだな。お前をどうやって女子寮のリゼの部屋まで連れて行くかって話だ」
「それなら問題ないです。私、透明になれるので」
「……は?」
「見せましょうか。はっ」
背景に溶けるようにすうっと消えていくスライム。マジで見えなくなった。
「うわ、凄い本当に透明になれるんだな」
「ちょっと、どさくさに紛れてどこ触ってるんですか」
手を伸ばすともにゅっと柔らかいものに触れる。確かにそこに居るようだ。姿は見えないが。
あと断じて変なところは触っていない。多分。こいつどこ触っても同じ感触だし。
「ヘイン?」
リゼが白い目でこっちを見ている。
「よく見ろリゼ、俺の手は明らかに胸の高さより上にあるだろ。誤解だ。」
「……まぁ、信じるわ。じゃあ、この子連れていくわね」
リゼは虚空に向かって「おいで」と手招きするとそのまま部屋を出て行った。
「リゼは、俺と婚約する事は嫌じゃないのか……?」
リゼの事は好きだし、多分リゼも俺の事を好きでいてくれてるんだろう。
これまではフリではあったが、事実上今の俺達は相思相愛のカップルという事になるのかもしれないが、このままいくとリゼは、そして俺はどうなるんだろうか。
後々楽になる、も気になる。リゼの真意が知りたい。
あー、俺もマインドリーディングが使えればな。
王道のようで王道じゃない多分ちょっと王道な魔法学校もの(仮題) 雨月さつき @samidare_orz
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