第77話

 幸いにも?あいつらの後は何事もなく寮の自室に辿り着いた。

 鍵とドアを開けて中に入ると、玄関にスライムが正座していた。

「うわっ」

「おーそーい」

「仕方がないだろ市場が遠いんだから。……ほらよ」

 鞄に入れてたジャムを取り出して渡す。その上にパンが載っていたので一旦机に置いた。

「おお、こんなに種類が……!」

 キラキラと目を輝かせて渡したジャムを見つめている。

「さっきみたいに貪るんじゃなくてちゃんと味わえよ。買いに行くの大変なんだから」

「はいはーい」

「……あぁそうだ、留守中に誰か来たりしたか?」

「別に誰も来てませんね」

「そうか。嫌な予感がする」

「?」

 とか言ってると、コンコンとドアがノックされる。ほら来た。災厄だ。

「一応隠れとけ、また新聞部かもしれないから」

「分かりました」

 そういうと再度ベッドの下に隠れるスライム。そこ、気に入ったのか?

「はい、今出ますよっと」

 扉を開けると、そこには満面の笑みを浮かべたリゼが居た。あぁ、やっぱりな……。

「どういうつもりだリゼ、説明してくれ……」

「んー?何のことー?」

「とぼけたって無駄だ、さっき道で俺とお前と婚約したって聞いて逆恨みの襲撃受けたんだが」

「あー、それね、別にいいじゃない。それよりもさ、中に入れてよ」

「いやよくねえよ……まぁ、玄関先でする話じゃないから中には入ってくれ」

「で、あの子どこ?」

「あの子?……スライムか。おーい、出てきていいぞ」

「はい?」

 俺の呼びかけに出てきたスライムを見て、リゼが硬直する。

「ねぇヘイン、この子なんか大きくなってない?」

「そうだな、お前よりデカいな」

「ねぇヘイン、どうしてこの子ジャムの空き瓶いっぱい抱えてるの?」

「それはな、うちにあるジャム全部食い尽くしやがったからだよ」

 見ればさっき買ってきたものも食い尽くされてた。早すぎる。もっと味わえって。

 魔物だから我慢とか苦手なのだろうか。どうなんだろう。

「うわーん、大きくなってるー!小さくて可愛かったのにー!」

 とうとうリゼが吠えた。本気で残念そうだ。その姿が残念だよ。

「失礼な、今も十分可愛いですよ」

 自分で言うな。……いやまあ自在に姿変えられるのだから自分で可愛いと思う姿にしてるのかもしれないけども。

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