第76話

「はぁ、めんどくさいなお前ら……」

 こっちは急いでるし早くリゼにも会いたいのに。主に問い詰める目的で。

「ふん、通りたくば力づくで通るんだな」

「まぁ、黒のお前にどうこうできるとは思えんがな」

 魔法が使える奴はこれだから。そうやって油断してる所を体術で投げ飛ばせば方が付くぞ。詠唱なんてする間もなくな。

 3人で寄ってたかってタコ殴りにした方がまだ現実的だ。魔法の詠唱なんてしてたらその隙にやられてしまうだろう。特にシロノアには。実際に戦うのであれば下手な魔術師よりよっぽど強い黒ネクタイの筆頭だからなあいつは。

 まぁ俺はシロノアではないし、そこまで体術に長けている訳でもないんだけど。

 あーもーめんどくせーな、ちょっと嫌がらせしてやろ。

「じゃあ通らせてもらうわ」

 そういうと同時にある魔法を発動しておく。

 俺はそのままスタスタと小脇に逸れて迂回する形で道を進む。

 それを見た3人組は当然追いかけようとするが、

「おい!逃げんじゃね……っ!?」

「な、なんだこれ!?気持ち悪い!」

「し、しかも動けねえ!」

さっき俺が発動した魔法で彼らの足元を泥にし、足首までずっぽり埋めておいた。

 使ったのは土属性魔法。茶ネクタイの奴も多分使おうと思えば使える魔法だ。かなり初歩的な奴だし。詠唱なしで出来るかどうかは分からないけど。

 俺も最近同じ嫌がらせをされたからな、気持ち悪さは分かる。そして今回は俺の時よりも深く埋めておいた。彼等には悪いが、急いでるんでな。

 後ろを振り向きもせずそのまま寮へと歩いていく。背後で何か恨みがましい罵声が聞こえたが、聞こえないふりをした。


***

「くそ、なめやがって!」

「黒ネクタイの分際で!」

「……おい、今の、お前ら、見たか?」

「ん?どうした、青い顔して。急に腹でも痛くなったか?」

「あいつ、詠唱してたか?」

「いや、してなかったな」

「それがどうかしたか?簡単な魔法なら詠唱なしでもいけるだろ」

「俺達、一歩も動いてなかったのに急にこうなっただろ?」

「ああ、まんまとしてやられたな」

「おかしいんだよ。俺達は沈んだ感触がなかったのに、いつのまにか埋まってたなんて」

「どういう事だ?」

「普通、土属性魔法で足元を泥にしたらそこから沈んでいくんだ。でも今のは、気付いたら足首まで埋まっていた。結果は似ていても、この違いはあまりにも大きすぎるんだ」

「回りくどいな、さっさと結論を言えよ」

「あいつ、地面の高さを一瞬で俺たちの足首ぐらいまで上げやがった。それも無詠唱で。そんな芸当は詠唱ありでもうちの首席クラスでも出来るかどうかだ」

「なんだと?」

「お前の勘違いじゃないのか?あいつ、黒ネクタイだぞ」

「いや、俺は茶ネクタイだからこそ分かる。あいつ、実はとんでもない力を隠してるかもしれねえ」

「あのチートがか?無いだろ。現にあいつは黒ネクタイじゃねえか」

「……いやでも待てよ、確かあいつ、入学当初はめちゃくちゃ魔法使える神童だって噂されてなかったか?」

「ああ、あったな。でも結局嘘っぱちで、本当は使えないからチートなんてあだ名ついたんだろ」

「あいつ、本当は今でもめちゃくちゃ魔法使えるんじゃないか?実際、入学当初は神童って言われてたじゃん。それが急に使えなくなるなんてあり得るのか?」

「誰かに頼んでそいつが代わりに魔法発動してたかもしれないだろ」

「何のためにだよ。それに、誰がだよ」

「それは、そうだが……」

「火のないところに煙は立たないと言うが、あいつ、本当に神童で……今でもその爪は隠しているだけなんじゃないか?」

「……だから、リゼリアさんも?」

「ああ、彼女は知っているのかもしれないな。あいつの本当の実力を」

「お前の言い分はよく分かった。確かに一理ある」

「だろ?」

「だが、その前に……」

「?」

「そろそろ助けてくれ、茶ネクタイ」

「お前の魔法じゃないと足が抜けそうにないわ」

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