第73話
先述した通り学院は貴族の居住区の中にある。居住区と言っても広い庭を備えた豪邸が並んでいるのではなく、基本的には庶民の家よりは豪華な住宅が並んでいる感じだ。
貴族といえども上から下まで階級が多くあり、中の上ぐらいまでの大体の学院生はこういった住宅に住んでいる。
しかし彼らの場合これが実家というわけではない。地方で行政やインフラを行う貴族の子供が学院に通う為に住む為の家がこれらであり、実家は広い庭を備えた豪邸であるらしい。貴族である事には変わりないので、メイドや執事が一緒に住んでいるケースも結構あるようだ。
ちなみに土地が限られている王都で無駄に広い庭を持てる貴族は一握りで、いわゆる大貴族なのだが、リゼもシロノアもイーシアもそうなので少し感覚が麻痺してしまう。
貴族の居住区は昼前となっても人気が少ない。裏路地のように危険というわけではなく、道幅も広く見晴らしもいいのだがこの先には学院しかない為に通る人が少ないだけだ。
このあたりまで登ってくると流石に人も居ない為噂話も聞こえてこなくなった。
後は学院まで戻るだけだな、と思ったところで奇妙なものが視界に入った。
顔を完全に隠すほど深いフードを被って何をするのでもなくただ佇んでいる人がいる。怪しすぎる。
うわ、関わりたくねえなあ……、と思ってそのまま横を通り過ぎようとすると、その人物に声をかけられた。女性の声だ。
「もしもし、そこのお兄さん」
絡まれた、最悪だ……と思うも声をかけられて無視した方が面倒くさいことになりそうだったので適当に流そうと立ち止まる。
「はい、なんでしょう?」
「この辺にドラゴンが出たって聞いたんですけど、何か知りません?」
何だろう、何か引っかかる。特に説明は出来ないんだけど、なんかこう、変な感覚がある。目の前に居るのは怪しい人なのに。
「ドラゴン?ああ、それなら魔法学院の生徒が倒しましたけど」
「あ、そうなんですか。……えっ?」
「ん?」
「倒したって本当ですか?」
「え、ええ。新聞にも載ってるみたいですけど」
「そうですか……良いのか悪いのか……あ、大荷物なのに失礼しました。では私はこれで」
「は、はい」
結局顔は見れなかったな。向こうもこっちの顔見れてないんじゃないか。
なんだったんだ……と思いつつも帰り道を急いでいた事を思い出し、歩き始めた。
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