第72話

「おい、今朝の新聞見たか」

「ああ、見た見た。ドラゴン討伐だなんてトゥーリェみたいな奴も現れたもんだな」

「ひょっとしたらトゥーリェだったりしてな」

「ありえる。若返りの魔法が使えるとかで1000年生きててもおかしくねえな」

 帰り道、歩いていると見知らぬ男性二人がこんな会話をしているのを耳にした。

 リゼは幼い頃から知っているしトゥーリェ本人じゃない事は知っているが、トゥーリェの末裔らしい事は以前の先生の発言からどうやら本当のようで、正解ではないがあながち間違いでもない、と言ったところだろうか。

 それとやはり話は広がっているみたいだ。こんな町中で普通に話している人達がいるぐらいには。

 魔法が使えすぎるとこんな感じで大衆の興味を惹いてしまうってのも考えもんだな、と改めて魔法を使える事を隠していく事を決意すると同時に、押しつけた事を申し訳なく思う。

 ……あの時は気が動転していてリゼに頼んだが、よく考えたらリゼの性格だと代償に何かとんでもない事をしでかすかもしれないな。

やばい、急に不安になってきた。先生が言っていた事も気になるし、早く戻った方が良さそうだな。

坂道を走って登るのは流石に疲れるので歩いたままで、しかし早足で帰路を急ぐ。

そろそろお昼時ともなれば結構道に人も見える。

「魔法学院生がドラゴン討伐ですって。流石ねえ。うちの息子も魔法の才能があればよかったのに」

「近くの街でドラゴンが出たんですって。しかも倒したのは魔法学院生。全く、国家魔術師達は何をしているのかしら」

「ドラゴンを倒したっていう例の学院生、美人揃いの学院生の中でも一際美人だとか。見て見たいもんだな」

「ドラゴン討伐って本当かよ?情報源どこ?……魔法学院!?マジかよ、じゃあ本当なんだな」

 先程聞こえてきた会話で意識したのか、至るところからリゼの噂話が聞こえてくる。それを聞いて、俺じゃなくて良かったと安堵している自分に気付く。

 好意的な意見も多いが、俺だったらもっと酷い事を言われていたに違いない。

 この現状だ、見返りにリゼが何か代償を求めてきたところで、それは俺の贖罪なのだろう。

 結構な荷物を持ち汗を垂らしながらそんな事を思った。

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