第67話

 ため息をつきながら扉を閉め部屋に戻ると、スライムが無言で近寄ってきて……そのまま背伸びして頭をなでられた。スライムにまで同情されるとは。

「よしよし」

「……お気遣いどうも」

「それはそうとジャムがなくなりました。おかわりを所望します」

「買ってこないとないぞ」

「そ、そんなご無体な」

 この世の終わりみたいな顔で絶望するスライム。お前のこの世、やっすいな。

「無いなら買ってきてくださいよ」

「今外に出ると周囲の奴らに何されるか分からないから買いに出たくないんだが……」

「大袈裟な。たかだか買い物でしょう?それにお強いんですから、襲われても平気でしょう」

「買い物だろうが歩いているだけで魔法で嫌がらせされるし、襲われたら相手を傷つけないように対処するの大変なんだよ。魔法が使えない事で通しているから」

「え、そうなんですか?あんなに凄い魔法使えるのに。どうしてです?」

「人間には色々とあるんだ。魔法が使える事が必ずしも良い事とは限らない」

 実力主義の魔物社会だとまた違う価値観なんだろうが、魔法が使えてもろくな事はないというのが俺の価値観だ。せいぜいギリギリ国家魔術師になれるぐらいに抑えて職にありつけるぐらいがちょうど良い。

「まぁ、あなたがどういう振る舞いをしようと私には関係のない事です。早く買ってこないと部屋を水浸しにしますよ。私、ドラゴンの魔力を貰ってから魔法も強くなりましたから」

「部屋を人質……いや、物質に取るな。横柄な」

「魔物ってこういうものです」

「はぁ……わかったよ仕方がないな。買ってくるから絶対に部屋から出たりするなよ。後さっきみたいに誰か来ても絶対ドア開けるなよ」

「分かっていますよ。私だってこのまま外に出るのは危険だって承知してます」

「ああ。じゃあ街で買ってくるから、結構時間かかるぞ。その間はマーマレードで我慢していてくれ」

「なるべく早くお願いします」

「どこまでも図々しいなお前!」

 師匠から別れ際に貰った宝石を売った金で多少の蓄えはあるとは言え、基本的に節制している貧乏学生なので今回の出費も気になってしまう。

 くそ、後でシラヌイ先生に請求しようかな。

 なんて事を思いながら財布と手提げ鞄を手に取り、玄関のドアを開けて再度外に出ると、相変わらず静寂が周囲を包んでいた。

 ドアの鍵をしっかりと閉め、確認する。スライムが不安だ。早足で行くか……。

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