第68話

 身構えていたのだが特に何事も無く寮を出て、学院を出て、町中を歩く。

そろそろ朝から昼に移ろうかという時間だが、暦上は休日ということもあってか他の人の姿はない。

学院の中でも誰ともすれ違う事もなく、すんなりと通り抜けられた。

 まぁ、市場の方へ行くと人も多いんだろうな。

 学院があるのは城下町の中でも中心に近い貴族が住む居住地区で、商業地域ではない。

市場は平民が利用する所なので城壁に近い外周部分にあり、中心にある学院からはなかなか遠い。

 また、学院はそれなりの高さがある丘の上にあるため、市場へ行くのは下りは良いのだが帰る時が大変だ。

 スライムの使い走りみたいな理由で市場へ向かっているとはいえ、天気も良く坂道を下っていくのは気持ちがいい。

 昨日の湖のような自然の景色も良いが、眼下に広がる城下町の風景のような人工物による景色もこれはこれで良いものだな。

 ……でもまぁ、しかしまぁ、一人で歩くのって結構しんどいな。

誰かと話しながらだとそれなりに遠くても苦痛ではないが、一人で歩くとなるとこうして景色を楽しんでみてもしんどいものはしんどい。

 あー、メリルでも誘えばよかったか。まぁさっきの事があったしなあ。いやでもそれなら寧ろ話すために誘うべきだったか。わかんねぇ。

 坂を下りきるとようやく喧騒が聞こえてきた。やはり市場は活気づいているようだ。

 市場の入り口に着くと予想通り人で溢れていた。若干辟易しつつ、この前ジャムを買った店を探す。

 探していると、カレンが居た。彼女もこちらに気付いたようだ。

「おっ、偶然だな。おはよう」

「おはようございます、ヘインさん」

「カレンも買い物を?」

「えぇ、うちのパンに使う材料を買いに。ヘインさんは?」

「ジャムが切れたから買いにきた。後ついでにパンも買って帰りたいんだけどやってる?」

「はい、焼きたてを置いてます!」

「じゃあ、後でお邪魔させてもらおうかな」

「是非に!……あ、そうだヘインさん、新聞、見ました?」

「新聞?見てないな」

「リゼさんがドラゴンを倒したって事で一面に大きく載っていて、ちょっとした騒ぎになってます」

「あー、そうなのか」

「驚かないんですか?」

「いや、俺その現場に居たからさ」

「えぇぇっ!?」

 俺の一言にカレンは青ざめて、少し涙目になっている。え、何かまずいこと言った?

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