第66話

「あ、初めまして!私、学院の新聞部部長のヒアリーと申します!」

 眼前でそう言う女性の服装は制服で、1学年上の白ネクタイだと分かる。

 背丈も体型も普通で、どこにでも居そうな学院生といった第一印象。テンション以外は。

 顔立ちは端正で美人の部類なのだろうが、歴史的に美男美女になりやすい貴族が多い学院では別に珍しくもない。失礼な言い方だが。

「はぁ、新聞部が何の用ですか?」

 学院の新聞部は学院外の商業としての新聞とは異なり、学院公認の課外活動とはいえ物好き達が月に1回自主的に作っている物なので採算度外視で好き勝手に作っているのが特徴だ。そのため、他者からの評判を一切気にせず強引な取材を敢行することも多々あり、多少煙たがられているのも事実だ。

 しかし内容としては魔法に関する有益な情報も多く、なんだかんだ掲示板に張り出されると読む者が多く、学院内の娯楽の一つとなっている。

「ずばり、英雄・リゼリアさんとの関係について!お聞かせ願いたく!」

 朝っぱらから玄関先で大声で騒がしいなあ。近所迷惑だろ。

「……リゼとは別に、仲のいい友人なだけですけど」

 英雄という言い方に引っ掛かったが、まぁドラゴン関連だろう。置いといていいのかは迷ったが取り敢えず一旦置いておいた。

「本当ですか?学院内ではお二人が熱愛してると噂がありますけども」

「別にそんな事無いですよ、互いの友人同士の繋がりで出会って、彼女の魔法の研究の為にしばらく行動を共にしていただけです」

「その割にはカフェでは随分意味深な会話をしていましたよね。それに、今のセリフ、完全に結婚式で言われる馴れ初めですよ」

 げ、この人、あの時あそこに居たのか……。

「……あなた達は俺とリゼをどういう扱いにしたいんですか」

「そうですねー、ぶっちゃけると『ドラゴンを倒した英雄と黒ネクタイの熱愛発覚!?』みたいな感じで記事書きたいんですよ。出来れば婚約ぐらいはしていて欲しいんですけど」

 あっけらかんと言ってのける。

「そんな記事書かれたら殺されかねないんで勘弁してください」

「大丈夫ですよ、死んでも蘇生できますから」

「……リザレクションが使えるんですね」

「ふふん。これでも私、第六学年の首席ですから。……っと私の事はどうでもいいんですよ、それで、ちゃっちゃと交際を認めてくれたらありがたいんですけど」

 この人首席だったのか。まぁ、光魔法でも最高難易度のリザレクションが使えるという事は相当優秀だし、主席でもおかしくない。……こんな人が首席か、と思わなくもない。

「そう言われても……」

 ただただ困惑してると、隣の部屋のメリルがドアを開けて出てきた。流石に騒ぎが気になったのか?

「あー、新聞部の皆さん、おはようございます。騒がしいから話聞こえてたんですけど、そうですね、そこのヘインとリゼリアさんは付き合ってます。本人達は恥ずかしがって否定してるんですよね。では」

 ……言うだけ言うと、メリルはドアを閉めた。

「やった、証言取れました!あ、じゃあヘインさん、もう結構です。失礼しました」

 こちらも言うだけ言うと、上機嫌で帰っていった。

 そして先ほどの喧騒が嘘のように朝の静寂が戻り、呆気に取られていた状態から回復して、ようやく事態が飲み込めた。

 うわあ、どうしよう。くそ、メリルの奴め……。

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