第65話
部屋に戻り扉を開けると、スライムがジャムの瓶を開けて貪っていた。
いや、まぁ、別にいいけどさ……。
「ああ、おかえりなさい」
「なんだ、気に入ったのか?」
「ええ。人間もこんなものを作るとはなかなかやりますね」
この会話の間にもジャムを手で掬って食べている。さながら野生動物のようなその様にこいつもやっぱり魔物なんだなと再認識する。
あと、人間は甘いものを食べすぎると太るが、スライムはどうなんだろうか。ちょっと気になるな。
「さて、と……。んで、結局今日俺はどうすればいいんだろうな」
リゼの引っ越しを手伝った方が良いんだろうが、別に家具は備え付けだしな。壊れていた所でリゼなら光属性魔法のリペアを使えば治せるし。
人間を治すだけでなく物も直せるのが光属性魔法の凄さだ。まぁ、基本的に白ネクタイの連中は人を治すか物を直すか、何方かを選択して極めていくので個人が。両方を扱うというわけでは無いのだけど。……リゼのような天才でもなければ。
そもそも俺とリゼは師匠から殆どの魔法……基本指示の組み合わせを習っており、魔法学院入学時点でもう学ぶ事はなく後はひたすら鍛練に励むしかない、といった状態だった。
他の学院生が7年かけて学ぶ事を俺達は既に体得しているので、そりゃまあ首席にもなるよな、とはちょっと思う。振り分け時点で既に白魔法の全て使える学院生なんて前代未聞だろうしな。
閑話休題。
スライムにジャム押しつけて貪らせている間にリゼの様子でも見に行こうかな、でもそういえば女子寮は男子禁制だったよな……と思った所で外が騒がしいことに気づく。
気付いたと同時に部屋のドアが激しくノックされ、知らない女性の声が聞こえて来る。
「ヘインさーん!ヘインさーん!」
「誰だ、非常識な……。スライム、ジャム食っててもいいからちょっと隠れてろ」
「言われなくてもそうする」
そう答えるとスライムは身体を溶かしてベッドと床の隙間に隠れていった。
それを確認してから部屋のドアを開けると、やっぱり知らない顔が並んでいた。
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