第64話

「俺とリゼじゃ釣り合わないだろ。今のフリだけでも数々の嫌がらせを受けている時点で明確だ」

「そうかな。ボクはお似合いだと思うけどね」

 話しながら髪を洗い、体を洗い、汚れを落としてから湯船に浸かる。

 トゥーリェは大のお風呂好きで、この大浴場の設計も行ったとか、なんでも出来るな、さすが伝説。

「シロノアとイーシアみたいに釣り合っているのがお似合いと言うんだろう。俺は平民だしリゼは大貴族、この時点でな」

「勿体無いなあ。上手くいけば逆玉の輿なのに」

「別に貴族になりたいわけじゃないからな……」

 貴族は貴族で権力争いや意地の張り合いで大変そうだからな、外から見てる分にも。

 学院の生徒も大半は貴族だし、既に多くの意地の張り合いが見受けられる。

 本気を出せば魔法だけで貴族の仲間入りをする事は容易だろう。だが、魔法が人より使えるからといってそれがただ恩恵を与えるだけじゃないのは身を持って知った。もう、人前で魔法を本気で使う事はしたくないんだよな。

「でもさ、ヘインってリゼの事大好きだよね」

「はああっ!?お、お前、な、な、な、何をそんなバカな」

「わかりやすっ!……ヘインのそういうところはボクも好きだよ」

「お前なぁ……」

「で、どうするのさ?本気で好きなんでしょ?今のままだったら、絶対後悔すると思うよ」

 メリルが滅多に見せない真顔で告げる。いつも飄々としていて何か仮面をかぶっているような奴だが、この台詞だけは本心だと確信できた。

「そりゃ、そうだけどさ……」

 なんて返せば分からず口籠る。

「はぁー、やっぱりヘインはヘインだね」

 メリルはそんな俺を見て、大袈裟に肩を竦めた。

「なんだ急に」

「べーつにー?まぁ、取り敢えずヘインが幸せになれる事を祈ってるよ」

 そういうとメリルは湯船から立ち上がり、「じゃーねー」と手を振りながら大浴場を出て行った。

 ……俺も上がるか。スライムが何かしていないか心配だしな。

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