第63話
朝食を摂り、一息ついたところで今日どうすればいいんだろうなと思う。
リゼの引っ越しがあるにせよ、明るい時間帯にスライムを連れ回すのは気が引ける。今はほとんど人間にしか見えない姿の為肌の色さえ変えてもらえば出歩く事は可能だろうが、男子寮に女子がいる時点で注目を浴びるし、あいつ誰だってなると絶対面倒くさいことになる。
取り敢えず自室で誰か来るまで待っておいた方が良いかな……と思いつつ、そういえば昨日そのまま寝た事を思い出した。
「そうだ、風呂入ろう」
「お風呂?」
「ああ、水浴びをお湯でやる感じだな」
「熱湯に入って大丈夫なんですか?火傷しません?」
「そこまで熱いんじゃなくて、せいぜい体温からちょっと高いぐらいのお湯だよ」
「なるほど。私も入りたいです」
「いや、流石にその姿だと……俺以外に他の人間も居る可能性があるしな」
「そうですか……」
露骨にガッカリしている。最初湖の中に居たぐらいだし、やっぱり水辺や水中が好きなのだろうか。
なんかこうもしょげられるとちょっとかわいそうになるな。いつか温泉にでも連れてってやるか。人目をはばかる方法が見つかったら、だが。
「じゃあちょっと風呂行ってくる。リゼか寮長以外が来ても開けないようにな」
「うん、行ってらっしゃい」
昨日スライムを入れていた桶にタオルや着替えを入れて大浴場へ。
……スライムを部屋に残して離れるのはものすごく心配だけども。
大浴場に着くと先客が一人いた。後ろ姿に見覚えがある。メリルだ。
流石のメリルも男子寮の大浴場では男と分かるような姿で入る。それが本当の姿なのか魔法で偽った姿なのかは分からないが。
「おはよう」
「やあヘイン、お帰り。どうだった、旅行は?」
「大変だったよ、色々と」
「ふうん。リゼとはどう、進展あった?」
「特に何も」
「えー、つまんないなあ」
「付き合っているフリだって分かってるだろ」
「でも形から入るって言葉もあるじゃない」
形から入る、ねぇ……。
俺とリゼじゃ釣り合わなさすぎるんだよな。向こうの親御さんにも迷惑かけるし。
俺の実の両親は駆け落ちだった、と昔親戚が言っていたのを聞いた事がある。
貴族の娘と庶民の男が恋に落ち、娘が家を飛び出したと。当然勘当され、面倒事を抱え込んだと親戚からも白い目で見られていたらしい。その二人の子が俺だ。
両親は昔事故で亡くなった。……今思うと、仕組まれた事故だったかもしれないが。
ともかく、幼かった俺は親戚に預けられるも、忌子として奴隷に近い扱いを受けていた。
そんな中師匠が現れて、俺を連れ出したんだ。
この経験があるからこそ、リゼの事は好きなんだが付き合うとかそういう事はしたくない。俺達の未来にあるのは決して明るいものではないだろう。
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