第62話

 成長したスライムに取り敢えず俺の服を着せて視界に入れても大丈夫なようにした。

 そうこうしているうちに朝を告げる鐘の音が聞こえる。いつもはこの鐘の音で起きるのだが、今日は珍しく早起きだ。起こされただけだけども。

 今日も学院は休みで、基本的に5日行って2日休むのが慣例となっている。トゥーリェがそういう風に定めたらしい。季節毎に長期休暇もある。

 まぁ今日はリゼの引っ越しがあるみたいだし、シラヌイ先生が言っていた「頑張ってください」という言葉も気になる。休めないだろうな……。

「とりあえず朝食にするか。スライムってなんか食べるのか?」

「基本的には何でも食べますよ、それこそドラゴンの死肉だろうと」

「……食べたのか?」

「ちょっとは」

「それで大きくなったんじゃないのか?」

「そうかもしれません。何故だか炎属性魔法を使えるようになったみたいですし」

「うっわ」

 スライムって本当はとても危険な魔物なんじゃないか、食べた相手の能力を吸収するとかそういう感じで。

「『うっわ』とはなんですか『うっわ』とは。スライムに向かって失礼な」

「悪い。つい口に出た。それで、同じ物でいいか?」

 学院の食堂は毎日朝昼晩料理を提供しているが、朝はあまり利用していない。まぁ、単に寝坊して朝の提供時間が終わった後にしか行動していないだけなんだけど。

 生徒に余裕を持って行動してもらうために朝は授業が始まる30分前には閉まってしまうのだ。その時間に起きる俺にとっては縁がない。

 というわけで、朝はいつもパンにジャムを塗ってそれで済ませている。朝はあまり食べられない体質なのでこれぐらいがちょうどいい。

 ちなみに今うちにあるパンはカレンの実家のだ。この前買ってきた。

 寮の中で魔法を使う事は禁止されているので、備え付けのコンロで火を起こしてそれでパンを焼く。コンロの火は国家魔術師によるもので、安定的に供給されている。

 表面がサクサクしてきたところで火を止める。今日の気分はオレンジのママレードだな。

「イチゴとオレンジ、どっちがいい?」

 スライムの分にどれを塗るか聞いてみる。違いが分かるのかは知らないが取り敢えず。

「甘ければなんでもいいですよ」

「じゃあイチゴだな」

 自分のにママレードを、スライムの分にイチゴジャムを塗ってそのまま渡す。

 スライムは受け取ったパンを不思議そうに見ている。まぁ、食べた事ないだろうな。

「毒じゃないから安心しろ」

「私毒効かないから大丈夫」

「うわぁ」

「『うわぁ』もダメです……うん!甘くて美味しい」

 一口頬張るとみるみるうちに顔が綻んでいった。ジトッとした何考えているか分からないような顔だったのが緩んでるのをみるとなんだか微笑ましい。野良猫に餌付けしている気分だ。

 というか普通に口から食うんだな。もっとこう、元の姿に戻ってガバッといくのかと思ってた。勝手なイメージで。

 あと半透明だから食べたパンがちょっと透けて見えるのが気になるな。人間の臓器を再現している訳ではないだろうし、全身が消化器みたいなものだろうが……。

 気になって見てたら、スライムにこう言われた。

「何故こっちを見つめているんですか、そんなにスライムの食事風景が珍しいですか。エッチ。変態。どすけべ大魔神」

 お前まで俺をそう呼ぶのか……。

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