第61話
取り敢えず洗面台の鏡の前まで連れていくと、スライムは驚いた様子で
「これが……私……?」
といかにもわざとらしいセリフを本気で言った。
「別になりたい姿を見せる魔法の鏡というわけじゃないぞ」
そんな鏡があるという話も聞いた事がない。咄嗟に思いついたジョークだ。
「それで、何でまた急に大きくなったんだ?スライムって成長早いのか?」
「成長が早い、という話だと合っていますね。ただ別に時間経過で成長した訳ではありません」
「ん?どういう事だ?」
「恐らく、倒されたドラゴンの魔力を吸収して成長したのでしょう。魔物は死んだ時に周囲にいる魔力を持つ生物に持っていた魔力をばら撒きますから」
「……なんだそれ、聞いた事ないぞ」
「仕方ないですよ。魔物は長らく人間の前から姿を消していましたから」
「という事は、あの時その場にいた俺とリゼにも魔力が分配されているのか?」
「そうですね。殊更ドラゴンともなると魔力の保有量も桁違いですから、大幅に魔力量が増えていると思います」
「そうなのか……」
魔力量が増えたと言われても魔力の保有量等は自覚する事は難しい。自分が思っている魔力保有量で発動できる魔法より更に魔力を要する魔法を発動すると限界は自覚できるが、魔法の発動を介さないといけないという点では常日頃意識しておく事は出来ない。
そして、魔力の保有量が分配される、という事は魔物を倒せば倒すほど強くなるという事だ。
……トゥーリェが魔物を殲滅したというのも、これが理由かもしれない。
魔物同士で争って新たな魔王が生まれるのを防ぐためか、それとも人が強大な力を得る事を防ぐためか。何れにせよ、トゥーリェは自身が最強の存在となる事で世界情勢を保とうと考えたようだ。
もしくは、魔法学院で殺し合いが起こるのを防ぐためかもしれない。人間だって魔物と言えるし、魔法学院には魔力を持った人間が大勢いる。……皆殺しにしてしまえば、全員分の魔力を一手に得る事ができる。
これまでそのような事件があったと聞いた事はないが、もしその方法で魔力を得た人物が現れた場合、最も魔王と呼ぶべき存在となるだろうな。
死亡直後であればリザレクションの魔法で蘇生はできるが、時間制限があるのもこの魔力の分配が関わっているのかもしれない。死後一定時間は体内に留まり、その後近くにいる魔物に持っていた魔力が分け与えられる、と考えられる。分け与えられる前ではあれば蘇生ができるといった感じだろうか。
そうなると魔力を持たないとされる人々も、実際には微量の魔力を有しているのかもしれないな。
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